BASTRO – Antlers: Live1991


(P-VINE,BLUE CHOPSTICKS/CD)

ハードコア的な熱とプログレ的な複雑さを合わせ持った鋭い音楽をやっていたBASTRO。周知の通りここからTORTOISEもGASTRも始まった。前身バンドであるSQUIRREL BAITの青く瑞々しいジャンク〜ハードコア路線を引き継ぎつつ、リリースを重ねるにつれ、よりハードにプログレ濃度やら変態度を向上させていた。とはいえ基本的にヴォーカル主体のロックバンドであるという形式は(かろうじて)保っていた。私自身、直接TORTOISEやGASTRに繋がる要素があまり見られないため、BASTROはメンバーの前キャリアという程度の認識しかなかった。しかし本国ではDavid GrubbsのBLUE CHOPSTICKSから発掘される、このBASTROのライブ音源はそんな甘い認識を打ち砕く内容だった。
録音時期はラスト作である2ndリリース後。Johnsonが抜け、Bundy K. Brownが加入したバンドとしての末期である(この後John McEntireがサポート的ポジションにまわり、BundyとGrubbsのアコースティック・デュオとなることでGASTRはスタートする)。BASTROがこの編成であった時期は短く、結局アルバムが録音されることはなかった。しかしここで聴ける楽曲群からは、この時期のBASTROが全く別バンドへと大きな変貌を遂げつつあったことが分かる。
本作はさまざまな場所でのライブ録音集であり、全ての演奏からヴォーカルが姿を消している。余分なモノが削ぎ落とされ骨格のみとなった、入り組んでいながらもミニマルな楽曲。過去のBASTROとは全然違う印象。何よりここで演奏されている曲は後にGASTRとして録音される曲なのだ。これにはかなり驚いた。BASTROはメンバーの前キャリアなどではなく、サウンド的にみてもGASTRと地続きのバンドだったのか。GASTRのコンセプト「ミニマルロックと溶け合う不定形な音響」の「ミニマルロック」の部分の青写真は、既にこの末期BASTROの時点で見えている。それもかなり熱く。(そして「不定形な音響」の部分は、その比重が増すのはやはりO’Rourke加入後である。またO’Rourkeはハードコアやロックをバックグラウンドに持たなかったが故に「ミニマルロック」の部分もロック的な熱を冷ました形でより強めてゆく。)
それぞれの曲についての詳細は下記。

1曲目「Antlers」はGsatrの1st「The Serpentine Similar」における「A Watery Kentucky」の原形であり、GASTR版はもっと速度を落とされ、ヴォーカルが加えられ、ドラムパートが大幅に少なくなる。
2曲目「Hirschenachk」はGsatrの2nd「Crookt, Crackt, or Fly」における「Work from Smoke」の一部であり、GASTR版では冒頭の2分間で使用される。そちらはドラムがなくなり、この後に歌と即興が加えられ長い曲となっている。
3曲目「Educated Fool」は明るいメロディの曲で一部がGrubbsのソロ「The Thicket」でも使用される。
4曲目「Metal Legs」はここのみで聴ける曲。
5曲目「Sleepy Taste」はGASTRの1st「The Serpentine Similar」における「Ursus Arctos Wonderfilis」の原形であり、かき鳴らされるギターにより、止まっては走り出すリフが繰り返される。GASTR版はドラムがなくなり、これがさらに多様に展開する。
6曲目「Beatlenacht」はGASTRの1st「The Serpentine Similar」における「For Soren Mueller」の原形であり、ここでは即興要素を含んだオリジナルな展開をみせる。
7曲目「Glistery」はGASTRのMCD「Mirror Repair」における「Dictionary of Handwriting」の原形であり、GASTR版では楽曲の後半において、やや違う形で使用される。
さらにドイツでのライブ映像が2つ収録されている。1つめは、まず「Glistery」。そして「Jefferson-in-Drag」(これはBASTROの2ndの曲でヴォーカル有り)。そして2つめは、まず「Floating Home」と「Noise/Star」(これらもBASTROの2ndの曲でヴォーカル有り)。そして「Hirscheneck」という構成。

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