BLOOD AXIS – Blot: Sacrifice In Sweden


(Cold Meat Industry/CD)

97年のCMI10周年フェスティバルにおける歴史的傑作ライブ。レーベル番号はCMIの記念すべき100番に当たる”X”。メンバーはM.Moynihanによるスポークンなヴォーカルとマーチングドラム、A.Leeのストリングス、R.Ferbracheのキーボードとディストーションギター、そしてDer BlutharschのA.Juliusのサポートという強烈な布陣。
本作の根幹にあるものは王の犠牲。スウェーデンには王を生贄として神に捧げた、ユングリンガ・サガにおけるDomalde王の説話があるのだが、ジャケットはその伝説を描いた、スウェーデンの国民的画家カール・ラーション(1853-1919)による巨大なフレスコ画「Midvinterblot」。(この絵には逸話があり、本国にて論争を引き起こし博物館から展示を拒否され、一時日本人の手に渡った時期がある。現在はスウェーデンに戻されている。)
アルバムの冒頭はイギリスのオズワルド・モーズレーのスピーチよりの引用で幕を開き、ヘンデルの「サラバンド」、プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」などのクラシック曲やトラッドのカヴァーを多く含みながら進行する。伝統と歴史が複雑に入り交じった、重厚なネオクラシカル世界。FIRE & ICEのカヴァーも有り…しかし、FIRE & ICEのカヴァーはまだ分かるが、STRAWBSの「The Hangman And The Papist」までカヴァーしてるのには驚かされる。オリジナルの物悲しい調子とはまた違う重々しさで「Forgive me God we hang him in thy name!」と連呼する。またLeeのストリングスが余りに美しい「Lord of Ages」が印象的である(この楽曲はドイツのAbsurdもカヴァーしている。恐らくMoynihanが執筆した書籍「Lords of Chaos」の取材において両者のあいだでコンタクトがあったからであろう)。
戦時下ファシスト政治家らのスピーチの引用は本作の王の犠牲という構図のなかで、重要なモチーフとして機能してると思える。戦争が終わり世界の刷新が行われる中で、王としてのファシスト指導者は、時代と共に放逐されたと言うところか…。彼らはある時代を覆った暗い思想の意味を読み替えようとしているのだろうか。まあ、このような深読みは脇に置いても、単純に音楽としてプログレ愛好家には絶対のお勧めでもある。

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