MUSLIMGAUZE – Sarin Israel Nes Ziona


(Staalplaat/CD)

Muslimgauzeの晩年の作品。冒頭から攻撃的なBPMの四つ打ちで始まる。一聴すればフロア寄りテクノの文脈でも充分使えるような音楽形式ではあるが、やはりそこはMuslimgauze、このようなスタイルではあっても、あくまでインダストリアルの系譜にあることを強く感じさせるノイズ度の高いダブな音響処理も健在。四つ打ちにアラビア旋律と曖昧模糊とした人声サンプル等がまぶされ、コラージュノイズ・ダブ・中近東テクノとでもいうべき独自世界が屹立する。これらの音要素を問答無用で貫通する強固なリズムが堪らない高揚感をもたらす。ゆったりとしたパーカッションのリズムによるトラックも、ハードなトラックが多いなか、よい小休止となっている。
Muslimgauzeといえば、アラブ支持の立場を取って活動を行ってきたことで知られるが、本作のタイトルは、Muslimgauzeサイトでのコメントによれば、イスラエルのNess Ziona市(ここにはIsrael Institute for Biological Research/IIBRが存在する)、およびエル・アル航空1862便墜落事故に由来する。また、ジャケットはサダム・フセイン大統領の肖像のあしらわれた腕時計であり、このようなアートワークからくる、MuslimgauzeことBryn Jones個人のメッセージの明確さも本作の重要な要素であろう。この姿勢は政治的パワーエレクトロニクス勢とも相通じる(ちなみに私はノンポリであるが)。Bryn Jonesの死後、2002年のリリース。

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MALVEILLANCE – Just Fuck Off


(Suffering Jesus Productions/CD)

D-beatで突っ走る、カナダのブラック・ハードコアパンク。遂にここまで変種のブラックメタルが出てきた(何だかカナダはAkitsaといい、変わり種が多いような気がする)。音だけ聴いてると、もうブラックメタルなのかどうかなんて、大した問題ではなく思えてくる。個人的には男臭いメロディのあるハードコア等も好きなのではあるが、これはこれで格好良い。ガナり声をあげるヴォーカルも音楽スタイルにはまっている。このようなハードコアとブラックメタルの相互影響には関心が湧くし、こういうのを聴いていると、Anti-Cimexを始めとする80年代スウェーデンのハードコアが後の北欧ブラックメタルに与えた影響は、やはりあったのだろうかと考えてしまう。ハードコアは門外漢なので断定出来ないのだが、あり得る話だ…。

GRIM – The Past Is Still In Current Use


(Drag & Drop Industrial/CD)

White Hospitalから分岐したユニットであるGrimのリリースした7EP、LP、12EPからの音源集(もうひとつの分岐ユニットがVasilisk)。80年代の日本においてここまでノイズ・インダストリアルを完成させたユニットが存在していたことは、その名前しか知らぬ不勉強な自分にとっては個人的に大きな驚きだった。デス・インダストリアル的な駆動音と、ノイズと同質化し崩壊したアジテーションヴォイスが荒れ狂う、現行欧州へヴィーエレクトロニクスを圧倒する高内容。パワーエレクトロニクスの攻撃的な部分が延々と拡大されているような暴力性。しかもただ暴力的なだけではなく、曲によっては憂鬱な旋律が密かに混入されているところも、全くもって素晴らしい。マーシャル・インダストリアル〜ブラックメタル系アンビエントに通じるシンセ曲も有り。さらには儚いアシッドフォーク曲まで手掛けており、その間口の広さにも驚かされる。これがまたShadoksから発掘されてもおかしくない美しい旋律。底が見えないどころではない…一体このユニットは何なのだろうか。手放しで絶賛したい驚異的な一枚。