ULVER – Nattens Madrigal


(Century Media/CD)

Ulverは、1stでフォーキーなブラックメタル〜2ndでトラッド&フォーク(しかもアコースティック楽器によって)〜3rdで劣悪音質のプリミティヴブラックをやって、最早ブラックメタルでやり残したことはないとでも言うかのように、その後トリップホップ〜アンビエント〜エレクトロニカ方面へ転身を果たしたバンドである。その後の作品はバンド上がりのユニットが電子音響なんかをやった場合によく有る、エレクトロニカ/電子音響としての脇の甘さを感じてしまい、一枚のみしか聴いておらずよく知らないのだが、1st〜3rdは全て素晴らしいと今でも確信を持って言える。一枚ごとにこれだけ方法論を変えていれば、ブラックメタルから離れるのも仕方ない。特にこの3rdはDark Throne三部作直系のプリミティヴブラックの傑作である。ジャリジャリした音質は勿論意図されたもので、シンプルでミニマルな楽曲がひたすら単調に走るリズムと重ねられ繰り出される。個人的には打ち込みを取り入れたブラックメタルよりも、こういったプリミティヴブラックにこそアヴァンギャルドらしさ、ノイズらしさを感じる。そのブラックメタルに踏みとどまりながらも、ブラックメタルから可能な限り逸脱するという所が、際どい魅力に満ちている。ブラックメタルを音楽形式として思考したバンドだからこそなし得た、理想型としてのプリミティヴブラック。ちなみに次作まではUruk-Hai(Burzum以前のVargのバンド)に一時関与したとされる、AiwarikiaR(Erik Olivier Lancelot)も在籍していた。

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ULVER – 1993-2003: 1st Decade in the Machines


(Jester Records/CD)

Ulverのリミックス集。一曲目はトリップホップ〜アンビエント〜エレクトロニカ方面へ転身したUlver自身によるブレイクビーツトラック。遂にこうなったのか…と感慨深いが、完成度は高い。そして以降は主にエレクトロニカ系のメンツによるリミックスが続く。殆どのリミキサーが路線変更後のトラックをリミックスしているので、アブストラクトなインストもののトラック、もしくは凡庸なエレクトロニカに終始している。Rephlexから作品をリリースをしているBogdan Raczynskiなどは、音自体はまんま幼稚なAFX。これとブラックメタルが繋がるとは何かの冗談のようだ。個人的には昔好きだったNeotropicなどが気に入っている。そして続くは一昔前に流行った音響モノのFenneszとPita…。やっぱりブラックメタルとMegoが繋がるとは何かの冗談のように思えてしまう…(このブログで取り上げることのなさそうな名前ばかりが続いて、自分でも妙な気分である。ちなみに初期Megoは大好きですが)。
それに対してノイズ寄りの何名かのリミキサーは初期のブラックメタル時代の音源をリミックスしている。まずはベテランLasse MarhaugらによるJazzkammerだが、これがガリガリのノイズの嵐で痛快極まりない。続いてV/vmもコラージュノイズを叩き付けるように吐き出す。そしてブラックメタルのよき理解者でもあるMerzbowは、当然1st「Bergtatt」とプリブラの傑作である3rd「Nattens Madrigal」をリミックス。サンプルループが徐々にハーシュノイズ化してゆく手法にて、じわじわと崩壊の度合いは高められるが、安直に暴虐へは至らず、一旦静かなパートへと落とし込まれる。そして溜め込まれた衝動は、終盤で混沌としたプリミティヴ・ハーシュノイズ・ブラックメタルに至る。ILDJARNとMerzbowが共演したかのようなサウンドであり、間違いなく我々にとってはここが一番の聴き所であろう。
現在のUlverのスタイルからすれば、やはり本作が制作された動機は「エレクトロニカ系リミックス集を作る」というものである。ノイズとブラックメタルが直接音楽的に繋がったから本作が作られた訳ではない。Merzbowがここに名を連ねているのも「Ulver→エレクトロニカ系トラックメーカー→MerzbowやJazzkammer」という迂回した構図によってである。しかしMerzbowのトラックを聴けば、たとえ事実はそうだとしても、ノイズとマイナーかつプリミティヴなブラックメタルが音形態の近似によって繋がる可能性が、初期Ulverのなかに存在していたことが分かるはずだ。