FAUST – Rien


(Table of the Elements/CD)

ジム・オルーク、彼の名前をはっきり覚える切っ掛けになった最初の一枚が本作である。ジャーマンプログレ大好きな若輩だった私が、当然のように買ったFaustの新譜(95年当時)。その内容に「流石はFaust。なんて緻密なコラージュワーク。」と思ってたら、実質的にはオルークの作品だったというトホホな巡り合わせであった。ここでオルークはプロデュースという肩書きではあるものの、Faustが相手ではスタジオでの計画的な録音になんてなるはずもなく、ライブのテープだけ送りつけられて、文句言われて、気の毒な事にそれをコツコツと手作業にて一人で仕上げる羽目になったという。なんともFaustらしい逸話ではないだろうか。しかし、そんな不運がこの素晴らしいコラージュ作品を産む事になるのだから世の中分からない。テープの使える部分の切り貼りで緻密に再構成したFaustに似た別の音楽。Faustを素材にしたオルークのリミックスとでも言おうか。初期のオルークの音楽が持つ、あの循環する感覚が堪らなく好きという方には必須の作品。他者に実制作を丸投げするという、Faustらしい脱臼的行為であると深読みするも良し。元素記号表レーベルらしいミニマルな銀一色のアートワークも美しい。その元素記号表レーベルの活動記録パンフによると1994年のアメリカでの「manganese festival」の時のFaustのライブが素材の模様。トニー・コンラッド、AMM、サーストン・ムーア、灰野敬二も出演。実際、灰野とはセッションに近い形だったのではなかろうか。一聴して灰野とわかるヴォーカルとギターがかなり入っている。
ノイズリスナーにとってはオルークとはどういう存在なのであろうか?。軟弱な音響?、程よくポップで程よくマニアックなスノッブ向けミュージシャン?、器用すぎるのと、音楽マニアでノイズからポップスにまで詳しいのが災いしてか、どうも硬派なノイズマニアからは受けが悪い気がする。別にノイズ聴く人に「Eureka」を勧める気は全く無いが、Gastr Del Solと初期の個人作品はどれも聴いておいて損はない。
過去において「音響派」と称された音楽やその周辺の実験的ポピュラー音楽が、ファッションや雰囲気に寄りかかったものに過ぎず、結果消費されて行ったのは明らかであるが、そんななか、ある時期までのオルークの仕事は他とは違う本当に意味のあるものとして私には感じられた。勿論そこで試みられた実験とは、過去の実験の焼き直しに過ぎない。しかし多領域の文脈を横断しつつ、先人の表現形式の実験を、実践的に辿り直そうとする気概が彼の中には存在していたと思える。その気概とは変化、経験を求めて広がる意志から来るものであったと言ってもよいだろう。

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