Jim O’rourke – Tamper


(P-VINE/CD)

チェンバー・ドローン作品。89-90年作。これはリマスター&リストアの施された再発盤。楽器編成も含めて、現代音楽に属する内容である。「Spirits never forgive」はチェロとエレクトロニクスによるドローンの中からパーカッションとヴァイオリンが浮かび上がり、不安感を増幅するように絡まり合う曲。オルークはチェロ、パーカッション、エレクトロニクスを演奏。「He felt the patient memory of a reluctant sea」は管楽器による長いスパンの繊細なドローン。ここでもオルークはオーボエとパーカッションを演奏。「Ascend Through unspoken shadow」は弦管楽器奏者5名による重厚なチェンバー・ドローン作品。この作品ではオルークは作曲に徹し演奏には参加していない模様。ドローンは循環するうちにピッチを上げ、混乱しながら縺れ合う。ノイズやフリーインプロに親しみながら、大学で作曲を学んでいたという、若き日のオルークらしいノイズ風味の現代音楽。

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Jim O’rourke – Some Kind of Pagan


(Sound of Pig Music/MC)

どうやらオルークの最初の作品であるらしいカセット。再発がかかったのか容易に入手。まだ新鋭ギターインプロヴァイザーであった時期の作品らしく、ギター主体の構成で、リバーブ以外のエレクトロニクスは用いてないらしい。
A面、やけに荒々しく打ち鳴らされるパーカッション(もしかしてこれもギターによるものなのだろうか?)のリズムに、細かいギターが加わる曲でスタート。そのシンプルさが微笑ましい。続いては爪弾かれるギターの小曲。そして残響フィードバックによるドローンと、引き延ばされたサウンドスケープ。そしてB面、まずは響き渡る軋み金属音に、特殊奏法ギターによるものであろうと思われる、発振音的なパルスがまとわりつく。即興にしては非常によく出来た、軋み系金属ノイズの傑作。やがてフィードバックを用いて、多少はギターらしい即興演奏の曲へシフトしてゆき、Mirrorのように幽玄なドローンへ突入。深いリバーブの霧の中、ギターによるドローンがレイヤーとして重ねられる。
彼のディスコグラフィーの中では、ギターインプロに分類されるであろう作品ながら、その構成のセンスの良さは特筆もの。即興演奏であることよりも、明らかにコンクレート的視点に立って制作されている。特にB面の見事な手腕に、後に音響作家として開花する才能が予感される。この最初の作品を聴いたことでオルークについては、自分の中で一区切りついた気がする。

MERZBOW – 抜刀隊 with Memorial Gadgets


(RRR/LP×2)

吾は官軍我が敵は天地容れざる朝敵ぞ、敵の大将たる者は古今無双の英雄で、これに従うつわものは、共に慄悍決死の士、鬼神に恥じぬ勇あるも、天の許さぬ反逆を、起こせし者は昔より、栄えしためし有らざるぞ、敵の亡ぶるそれ迄は進めや進め諸共に、玉散る剣抜きつれて、死する覚悟で進むべし。

西南戦争にて警視庁巡査によって結成された、日本刀にて武装した白兵決死隊「抜刀隊」の名を冠するコンクレート・ノイズの傑作。CDバージョンとは別テイクのオリジナル盤である。モンドなポルノ音源やゴツゴツした無骨な具体音(INA-GRM関係の音源?)を投げつけるように無軌道に吐き出す、アナログ時代のコラージュ的なMerzbowが堪能できる。しかし何と言ってもB面の抜刀隊〜ジャンク・ダキニに至る流れが興奮もの。抜刀隊の歌がまず引用され、しばらく延々とじらすように具体音が羅列され、終盤でノイズが抜刀隊の歌と一緒に立ち上がる様まで、とにかく完璧である。またアートワークも見事。日本において政治的モチーフを掲げたノイズ/パワーエレクトロニクスは殆ど皆無であるが、真意はともかく欧州の政治的なパワーエレクトロニクスに通ずる、そのモチーフ選択のセンスも興味深い。ちなみに抜刀隊の歌は後に「陸軍分列行進曲」として編曲され親しまれている。

ULVER – Nattens Madrigal


(Century Media/CD)

Ulverは、1stでフォーキーなブラックメタル〜2ndでトラッド&フォーク(しかもアコースティック楽器によって)〜3rdで劣悪音質のプリミティヴブラックをやって、最早ブラックメタルでやり残したことはないとでも言うかのように、その後トリップホップ〜アンビエント〜エレクトロニカ方面へ転身を果たしたバンドである。その後の作品はバンド上がりのユニットが電子音響なんかをやった場合によく有る、エレクトロニカ/電子音響としての脇の甘さを感じてしまい、一枚のみしか聴いておらずよく知らないのだが、1st〜3rdは全て素晴らしいと今でも確信を持って言える。一枚ごとにこれだけ方法論を変えていれば、ブラックメタルから離れるのも仕方ない。特にこの3rdはDark Throne三部作直系のプリミティヴブラックの傑作である。ジャリジャリした音質は勿論意図されたもので、シンプルでミニマルな楽曲がひたすら単調に走るリズムと重ねられ繰り出される。個人的には打ち込みを取り入れたブラックメタルよりも、こういったプリミティヴブラックにこそアヴァンギャルドらしさ、ノイズらしさを感じる。そのブラックメタルに踏みとどまりながらも、ブラックメタルから可能な限り逸脱するという所が、際どい魅力に満ちている。ブラックメタルを音楽形式として思考したバンドだからこそなし得た、理想型としてのプリミティヴブラック。ちなみに次作まではUruk-Hai(Burzum以前のVargのバンド)に一時関与したとされる、AiwarikiaR(Erik Olivier Lancelot)も在籍していた。

ULVER – 1993-2003: 1st Decade in the Machines


(Jester Records/CD)

Ulverのリミックス集。一曲目はトリップホップ〜アンビエント〜エレクトロニカ方面へ転身したUlver自身によるブレイクビーツトラック。遂にこうなったのか…と感慨深いが、完成度は高い。そして以降は主にエレクトロニカ系のメンツによるリミックスが続く。殆どのリミキサーが路線変更後のトラックをリミックスしているので、アブストラクトなインストもののトラック、もしくは凡庸なエレクトロニカに終始している。Rephlexから作品をリリースをしているBogdan Raczynskiなどは、音自体はまんま幼稚なAFX。これとブラックメタルが繋がるとは何かの冗談のようだ。個人的には昔好きだったNeotropicなどが気に入っている。そして続くは一昔前に流行った音響モノのFenneszとPita…。やっぱりブラックメタルとMegoが繋がるとは何かの冗談のように思えてしまう…(このブログで取り上げることのなさそうな名前ばかりが続いて、自分でも妙な気分である。ちなみに初期Megoは大好きですが)。
それに対してノイズ寄りの何名かのリミキサーは初期のブラックメタル時代の音源をリミックスしている。まずはベテランLasse MarhaugらによるJazzkammerだが、これがガリガリのノイズの嵐で痛快極まりない。続いてV/vmもコラージュノイズを叩き付けるように吐き出す。そしてブラックメタルのよき理解者でもあるMerzbowは、当然1st「Bergtatt」とプリブラの傑作である3rd「Nattens Madrigal」をリミックス。サンプルループが徐々にハーシュノイズ化してゆく手法にて、じわじわと崩壊の度合いは高められるが、安直に暴虐へは至らず、一旦静かなパートへと落とし込まれる。そして溜め込まれた衝動は、終盤で混沌としたプリミティヴ・ハーシュノイズ・ブラックメタルに至る。ILDJARNとMerzbowが共演したかのようなサウンドであり、間違いなく我々にとってはここが一番の聴き所であろう。
現在のUlverのスタイルからすれば、やはり本作が制作された動機は「エレクトロニカ系リミックス集を作る」というものである。ノイズとブラックメタルが直接音楽的に繋がったから本作が作られた訳ではない。Merzbowがここに名を連ねているのも「Ulver→エレクトロニカ系トラックメーカー→MerzbowやJazzkammer」という迂回した構図によってである。しかしMerzbowのトラックを聴けば、たとえ事実はそうだとしても、ノイズとマイナーかつプリミティヴなブラックメタルが音形態の近似によって繋がる可能性が、初期Ulverのなかに存在していたことが分かるはずだ。

MUSLIMGAUZE – Sarin Israel Nes Ziona


(Staalplaat/CD)

Muslimgauzeの晩年の作品。冒頭から攻撃的なBPMの四つ打ちで始まる。一聴すればフロア寄りテクノの文脈でも充分使えるような音楽形式ではあるが、やはりそこはMuslimgauze、このようなスタイルではあっても、あくまでインダストリアルの系譜にあることを強く感じさせるノイズ度の高いダブな音響処理も健在。四つ打ちにアラビア旋律と曖昧模糊とした人声サンプル等がまぶされ、コラージュノイズ・ダブ・中近東テクノとでもいうべき独自世界が屹立する。これらの音要素を問答無用で貫通する強固なリズムが堪らない高揚感をもたらす。ゆったりとしたパーカッションのリズムによるトラックも、ハードなトラックが多いなか、よい小休止となっている。
Muslimgauzeといえば、アラブ支持の立場を取って活動を行ってきたことで知られるが、本作のタイトルは、Muslimgauzeサイトでのコメントによれば、イスラエルのNess Ziona市(ここにはIsrael Institute for Biological Research/IIBRが存在する)、およびエル・アル航空1862便墜落事故に由来する。また、ジャケットはサダム・フセイン大統領の肖像のあしらわれた腕時計であり、このようなアートワークからくる、MuslimgauzeことBryn Jones個人のメッセージの明確さも本作の重要な要素であろう。この姿勢は政治的パワーエレクトロニクス勢とも相通じる(ちなみに私はノンポリであるが)。Bryn Jonesの死後、2002年のリリース。

MALVEILLANCE – Just Fuck Off


(Suffering Jesus Productions/CD)

D-beatで突っ走る、カナダのブラック・ハードコアパンク。遂にここまで変種のブラックメタルが出てきた(何だかカナダはAkitsaといい、変わり種が多いような気がする)。音だけ聴いてると、もうブラックメタルなのかどうかなんて、大した問題ではなく思えてくる。個人的には男臭いメロディのあるハードコア等も好きなのではあるが、これはこれで格好良い。ガナり声をあげるヴォーカルも音楽スタイルにはまっている。このようなハードコアとブラックメタルの相互影響には関心が湧くし、こういうのを聴いていると、Anti-Cimexを始めとする80年代スウェーデンのハードコアが後の北欧ブラックメタルに与えた影響は、やはりあったのだろうかと考えてしまう。ハードコアは門外漢なので断定出来ないのだが、あり得る話だ…。