AKITSA – Aube de la Misanthropie


(Raging Bloodlust Records/CD×2)

カナダのNSプリミティヴ、Akitsaの二枚組。Disc1は1999年のデモ音源であるが、ここにまともなブラックメタルの痕跡はない。インプロのような不穏なギター〜うめき声〜演奏の断片と、壊れたプリブラが交互にやってくる展開。ノイズを聴く人間からすると、いかにもな雰囲気重視のノイズはいまいちだったりするのだが、ラストの20分あるノイズトラックは高内容。初期のWHITEHOUSEのようなスカスカのフードバックノイズが延々続き、男女のリーディングが淡々と語られる。Disc2はちょっとまともな(?)プリミティヴブラックになってきたと思える2000年から2003年までの音源集。垂れ流しインプロのような演奏とノイズが漂う中、ミニマルなギターフレーズやILDJARNの様なペナペナのプリブラが、突如思い出したように奏でられるという内容。特に#4の形容不能な無気力プリブラが素晴らしい。全くもって平坦でミニマルな演奏に、喚き声と棒読みの普通声ヴォーカルが乗る。普通にノイズだけをやっていたら案外平凡なノイズに終わっただろうが、絶妙なバランスで飛び出す壊れ切ったプリブラの要素がAkitsaらしく素晴らしい。

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AKITSA, PRURIENT – Split


(Hospital Productions/CD)

Hospital Productionsを主宰しているアメリカンハーシュノイズのPrurientと、カナダのNSプリミティヴブラックメタルのAkitsaという異色の組み合わせによるスプリットアルバム。まずはAkitsa、1曲目「Terre ternelle」は不気味な前兆を感じさせるメロディから、ハーシュな金属系ノイズに突入し、さらにそこから持ち前のプリブラへ展開するという素晴らしい内容。「Soleil Noir」以前の録音なのだろうか、スローで陰鬱なリフを淡々と繰り返し、断末魔の叫び声を呻き散らすという、BURZUM直系の厭世的ブリミティヴブラックをやっている。ひたすら反復されフェードアウト。2曲目「Goetie」は既発曲。全く同じ傾向かと思わせ、最後に四つ打ちドラムと悲壮なギターで締める。Prurientはダークな低周波からスタートし、微かに聴こえるクラシック曲既成音源を含みつつ、徐々にハーシュノイズによる暴虐が露になる展開の30分にわたる大作。ラストではパワエレ的絶叫も飛び出す。Grey Wolvesに影響を受けたと語り、イントロ的扱いながらハーシュノイズを導入したAkitsaによる冒頭曲がやはり印象的。ノイズとプリミティヴブラック、CD1枚を通してひとつの確固たる世界観を擁する傑作スプリット。とにかく真っ黒である。

L’Acephale – Mord und Totsclag


(Skullfucking Tapes/MC)

ブラックメタルとは社会へ対する断固たる態度表明であり、このバンドの場合、それはバンド名からもうかがえる。この態度は子供じみた露悪趣味とは異なる。このL’Acephaleはそのような社会的な意味で、興味深いブラックメタルバンドである。また、政治的思想性への傾倒を堂々と見せるMichael MoynihanのBlood Axis周辺人脈である、WaldteufelのMarkus Wolffがミリタリードラムで、本バンドに参加している(通常のドラマーはもう一名在籍している)。
未聴であるがL’Acephaleは「VA – compilation of Black Metal covers of Kazuki Tomokawa songs」にも参加しているとのこと(それにしてもブラックメタルと友川カズキ…、なぜそんなことになったのか)。本作はParasitic Recordsからリリースされた1stCDの、Skullfucking Tapesからのテープ版再発。典型的な劣悪音質プリブラを演奏するが、Burzumの影響の見いだせる厭世的で憂鬱なリフによる楽曲、そしてWaldteufelそのままのリチュアル・アンビエントやマーシャル・インダストリアル的な楽曲もあり。なかでも雷鳴のようなSEのなかプリミティヴなギターリフがミニマルに反復され、行進曲のように単調なミリタリードラムが打ち込まれるトラックなどは異形のブラックとして出色の出来。思想性を重視するようなノイズリスナー兼ブラックメタル愛好家に勧めたい作品。

秋山邦晴 – 秘蔵テープ作品集1


(Edition Omega Point/CD, MCD-R)

実験工房のメンバーであり、クロストークインターメディア(69)の企画にも関わった、現代音楽批評家として著名な秋山邦晴は、実験映画マニアからすれば何といっても松本俊夫の「石の詩」の音響担当として知られる(他に秋山は「アニメーション三人の会」の音楽も担当している)。わずか10日で松本の映像構成と平行して進められた石の音によるミュージックコンクレートは、寡黙な映像との相乗効果をもたらすものであった。音楽評論家自身が密かに前衛的音楽を制作していたという飛躍は、瀧口修造を思い起こさせるスタンスである。良い意味でのアマチュアリズムと研磨された方法論先行の音楽は、本職の音楽家の作品と同じくスリリング。このCDでも秋山の「Environmental Mechanical Orchestra」「日生劇場のデモンストレーションの記録」「Music for H.Bomb」といった作品が収録されている。「Environmental Mechanical Orchestra」は「空間から環境へ」(66)で展示された音響装置の録音物である。ブヨブヨとうねる不気味な変調された金属音が淡々と継続する。他の2作品はテープによる音響作品。音色の探求が優先された、初期の電子音楽~テープ音楽らしい、ぶつ切りの断片の羅列による構成。特に「Music for H.Bomb」のノイズに近い無機質かつ即物的なささくれた音の感触がフェチ心をくすぐる。ボーナスで「テープ音楽素材音源集」までも付いた、封印された60年代の遺産である。