SLEEP – Dopesmoker


(Tee Pee/CD)

ストーナー/ドゥームという音楽形式に私が興味を覚えるのは、楽曲よりも音の質感に重きをおき、聴き手に陶酔を与えることを目的化しているが故である。これらの音楽形式をとるバンドらは最初期Black Sabbathのいかがわしさと、粗雑さと、重さを継承し、それを極端化させる。この極端化の果てが2003年の名作「Dopesmoker」である(本作は1996年に録音されるが、発表されないままにバンドは解散。1999年には短縮版が「Jerusalem」としてリリースされた)。
この作品の何がそんなに極端なのかと言えば、タイトル曲が約一時間にも及び、しかもそれがただひとつのリフによって成り立っているところである。この長時間反復されるリフは、単調さを感じさせることなく、揺らぎを持って万華鏡的な変容を続ける。またドラムの手数が多くフリーキーであることも、単調さを感じさせない理由であろう。微細な演奏のバリエーションはあっても、それは堂々巡りの果てに、もとの地点に戻ってくる。組曲的な展開ではなく、ただひとつの要素が一時間の長さに拡大されているのだ。
この形式はミニマルテクノ、(ある種の)ダブ、ハーシュノイズ、ドローンによく似ている。コンポジションではなく、サウンドの質感が優先されているのだ。そして、ここで重視される質感とはストーナー/ドゥーム、スラッジにとって重要な要素である「重たさ」に他ならない。この重音圧による麻痺にも似た恍惚の感覚と、先述の拡大された堂々巡りによる催眠的効果の相乗効果がこの音楽のコアである。油断して聴く者は、この恍惚的催眠に簡単にはめ込まれてしまうだろう。本作は私にとって最高のアンビエントであり、鎮静剤である。
ちなみに歌詞は、タイトル通り「ストーナー・キャラヴァンが聖地エルサレムを目指す」という奇妙かつ妄想的なもの。夢見る身体は現実世界に留まるが、意識は拡大されてゆき、ストーナー・キャラヴァンは精神世界の奥底へと旅を続ける。終わりのない、精神世界の奥底への旅を。これが何の隠喩なのかは明白だ。
まるでBlack Sabbathの様なボーナストラックも一曲収録。

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