土本典昭の世界1

名古屋シネマテークに「土本典昭の世界」を観に行った。ビデオで持っている作品もあるが、この日は下記2作品を鑑賞。簡単にメモ的感想を。

土本典昭 – ある機関助士
(Film, 37min, 1963)
国鉄のPR映画として制作されたという作品。カラー、非同録。勇壮なSLの走行シーンからはじまり、なかなかダイナミックなショットが続く。そして機関士らの訓練、実際の業務が説明されてゆく。その業務の厳しさの表現に、監督の政治的スタンスの微かな発露を見て取ることも出来る。しかし構成が巧みなため、それを気にせずともどんどん機関士の世界にのめりこんでゆくことが出来た。

土本典昭 – ドキュメント 路上
(1964, 54min)
撮影は鈴木達夫。警視庁の協力のもと、交通安全映画として制作された。モノクロ、非同録。ドキュメンタリーではあるが、それはノンフィクションであることを意味しない(全てのドキュメンタリーがそうだ)。タクシー運転手の日常を家庭、職場、業務のなかから浮かび上がらせる。劇映画的なストーリー構成(ラストは業務中の事故と、その後日の事故への注意を促すタクシー会社経営者の朝礼で終わる)をとっている。モンタージュの巧みさと、鈴木達夫の厳密に構成されたカメラワークは、素晴らしいクオリティである。
しかし、このような視点で見る必要はないのかもしれないが、政治的なスタンスから観れば政治的動機の根拠が実際の状況と乖離しているようにも感じられる。ここで描かれた抑圧されるタクシー乗務員の日常は現実のそれと同じであったのだろうかと。ここから水俣シリーズへ向かい、自らを抑圧される者のなかに置いてゆく土本典昭の道程は、一本の線でつながっている。

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