Jim O’Rourke – Long Night


(Streamline/CDx2)

クリストフ・ヒーマンのStreamlineからの二枚組、まだオルークが大学で音楽を学んでいた時期の作品の発掘であり、リリースにあたってリマスターが施されている。ヒーマン、チョークによるMIRRORのような、電子音によって丹念に制作さたドローン作品である。現代音楽のドローン作品は往々にしてコンセプト先行である場合が多いのだが、そこはノイズやフリー、すなわち実験的ポピュラー音楽に当時既に関わっていたオルークらしく、細部まで音響そのものに対するフェティシズムが詰め込まれており、分かり易くて良い(表現とは必ずしも分かり易いのが良いわけではないが)。
本作には初期のオルークに顕著な、溺水の感触がよく表れている。揺らめくドローンは、薄い皮膜のように折り重ねられ淡々と持続する。人は水に浸かるとき、身体を包み込む液体の重さを感じる。たとえ身体を動かしても、水は包み込んだ身体を離そうとはしない。そして、ゆっくりと麻痺させるように、羊水のなかに浸かる胎児のように、水のなかで身体の境界は揺らめく。そこでは怖れではなく、ある種の安堵にも似た感覚が呼び起こされる。それは衰弱の感触であり死の感触でもある。この溺水の感触は、日付が変わり、朝を迎えるまでの、夜の暗さにもよく似る。ここでも身体は大きな、平坦な静寂と暗さに包まれる。

本作はデヴィッド・バーマンに捧げられている。

ブラックメタルとプログレ/電子音楽とノイズ

書店で興味半分で「魔獣の鋼鉄黙示録—ヘビーメタル全史」を立ち読みしたところ、MAYHEM「Deathcrush」に、ドイツのプログレ/電子音楽の偉人であるConrad Schnitzlerが参加していた理由が書かれていた。
http://www.discogs.com/release/368615

ある種のブラックメタルの連中は音楽の幅が広いと思える。そういえば先日再発されたBrighter Death Now「Necrose Evangelicum」にはMortiisが参加している。
http://www.discogs.com/release/104612

あと、もちろんAttilaのSUNN O)))への参加も。

「The Seasons」ライブ映像

牧野貴とジム・オルークの同志社でのライブ映像が公開されていた。個人的な印象に過ぎないが、こういう音楽を演奏している時のジム・オルークはとても良い。

「イヴの時間」と商業アニメ的スタイルの個人制作アニメと黒坂圭太

吉浦康裕の「イヴの時間」を観た。本作はYahoo動画(8/1より)と公式サイト(8/3より)にて観られる。以下、公式サイト。

http://timeofeve.com/
吉浦康裕は今回より個人制作ではなく小規模集団制作へと移行し、商業アニメの制作形態へと接近している。新海誠もそうだが、商業アニメ的スタイルの個人作家が作画面でのクオリティアップを求めると、どうしてもこういうスタイルになるようだ。しかしながら作品全体においては一個人のコントロールが通常の商業アニメよりも可能なため、個人の作品として受け取ることが出来る。従来より個人制作のアニメといえばアートアニメーション寄りのものがほとんどだが、こういう商業アニメ的なスタイルを持った個人制作(あるいはそれに近い小規模集団制作)のアニメはもっとあっていい。
新海誠も吉浦康裕もそっち方面(オタク系列文化圏)からスタートしているが、こっち方面(実験映像、アニメーション系列文化圏)からスタートして、いい意味で商業アニメというか、マンガのテイストに接近しているのは黒坂圭太となるだろう。「緑子」の公開はまだでしょうか。