Jim O’Rourke – Despite The Water Supply


(Touch/7EP)

ジム・オルークの新作がリリースされた。それは2008年5月の録音であり、初期の仕事に立ち戻ったかのようなオルガンや弦楽器によるドローン作品であった。ここで聴かれる軋み合いながら縺れ合う音の感触はとても素晴らしい。このところオルークの作品といえば、フリーインプロや発掘音源ばかりであったので(武満徹の「コロナ」は別とする)、新作として再びミニマリズムとしてのドローンに取り組んだことには嬉しい驚きを感じた。私の聴きたかったオルークの音楽とは、まさにこのような音楽だ。
本作には映像作家である牧野貴への謝辞が記されている。思えば牧野のフィルムにつけられたオルークのサウンドトラックは、どれもオルークの初期の仕事を思わせる実験的な内容であった(もしかしたら本作もその過程で生まれたものであるのかもしれない)。私は二人の共同作業のなかで、牧野のフィルムがオルークのスタンスに何らかの影響を与えたのではないかと思っている。
私は全てがやり尽くされ前衛が消え去ったあとの音楽の世界で何が出来るのかを、オルークの音楽を通して確認してみたいと思い続けている。冷笑的な態度で過去の音楽のパロディに走るのでもなく。既成の音楽形式に乗っかって「日常のかけがえなさ」に逃避するのでもなく。多様性の陳列に安定を求めるのでもなく。進歩史観としてのモダニズムに逆行するのでもなく。過去の音楽における実験をたどり直しながら、そこに今日的な変化の可能性を見出すことは可能なのかを。
なお、このTouchの7インチシリーズは、デジタル環境が一般化した今の時代において、敢えて7インチの固有性を問い直すことをコンセプトとしている。音楽の内容も非デジタル環境における制作ということで足並みが揃えられている。音のテクスチャー、溝、レコードをかけるという行為、カバー…7インチとは7インチに固有の経験をリスナーに与えることができるメディアだ。RPMもレーベル側からは自由に調整することが推奨されている。

Advertisements