Bill Morrison – Decasia: State of Decay


(Film, 67min, 2004)

各地のフィルムフェスにて賞を獲得した、ビル・モリソンによる長編実験映画「Decasia: State of Decay」。本作はフィルムの物質的性質を生かした、典型的なファウンドフッテージものである。この作品において作者は、引用されたフィルムに対してスクラッチや薬品等による加工変調を施している。シーンによってはかなり激しい加工変調が行われており、傷や泡のテクスチャは奇形的に歪みながら元々の具体性のあるイメージと溶け合う。それにより視線は具体性のあるイメージと、物質=フィルムの表面に発生した抽象的なテクスチャの間を行き来する。この意識の往復運動のなかで観客は映画を観ることを再認識し、映画のもつイメージの豊穣な奥行きに気がつくだろう。私はアナログ信者ではないが、こればかりはビデオのプロセスでは得ることの出来ない経験であると断言できる。フィルムを含め、物質的なアナログメディアの表面に刻まれたイメージを観ること。この経験は絵画の範疇に属するものだ。
また本作は67分というこの手の実験映画にしては長い時間の持続を有している。この持続の中で、フィルムに元々写されていた20世紀前半を表象するイメージが崩壊させられていくことは、観客にある種のカタルシスを与える。またマイケル・ゴードン作曲によるオーケストラの演奏も、ミニマルであり、時間の持続によって生じる緊張感を高めている。

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