『Lords of Chaos/ブラックメタルの血塗られた歴史』について

多くの場合、日本におけるブラックメタルの受容は表面的なものであり、それは結局のところ音楽としての受容であったといえるだろう。一般的なメタルリスナーにしてみれば、それでも問題は全くなかったといえる。(EmperorとBurzumの日本盤発売なんて、もう10年以上も昔の話だ。その頃の私は、当時好きだったプログレとデスメタルが重なり合ったような音楽としてブラックメタルを聴いていた。)
当時からブラックメタルに付随するサタニズムの要素は、ほとんど宣伝文句の域を出ないようなものとして取り扱われていた。「この人たちは悪魔崇拝してます、教会燃やしています、ヤバいです」というような言説は、音楽に添え物のように付随する分には、ほどよく危うい雰囲気を漂わせて宣伝文句としていい案配だったのだろう。ブラックメタルへの理解は、ほとんどの場合において表面的なものに過ぎなかった。
本書はそのようなブラックメタルへの表層的な理解を越え、この特異なサブカルチャーに対する歴史的・社会的把握を促す。そして、ある意味においてその危険性を理解する契機となる。原書の初版は98年であり、それは欧米でのNSBMの隆盛を予言するかのようなタイミングであったと言える。NSBMとはNational Socialist Black Metalの略称であり、国家社会主義/民族主義を掲げるブラックメタルを指す。パンクにおけるそれの、ブラックメタルにおける表出と理解していいだろう。そして、これはナチズムと関連する。
続きます。

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