Silmaril – The Voyage of Icarus


(Locust music/CD)

キリスト教徒の若者らの集まりの中で結成されたフォークグループ、と聞くと単なるホーリーな雰囲気のフォークを思い浮かべるかもしれないが、このSilmarilの(というよりリーダーであったMatthew Peregrineの)精神の遍歴はもっと複雑なものであったかもしれない。Peregrineはキリスト教徒であり、同性愛者であった。Silmarilの音楽において、彼はどこか神秘主義的な暗い世界観へと足を踏み入れたように思える。彼は73年にグループを解散させた後、ゲイコミュニティへと移って生活し、HIV感染によって90年代に死亡している。この生き方自体、どこかバタイユ的なるものを感じさせる。宗教を介し、神秘主義的(ペンテコステ派であったらしい)なるものを経由して、その反転として蕩尽へと至るというルートが。またトールキンからとられたバンド名からも分かるように、ミドルアースの物語にも影響を受けているようだ。
その音楽はアコースティックギターを中心とした禁欲的なものであり、男女のヴォーカルが寂寥感を漂わせながら歌い上げられる。メンバーらはIncredible String Bandのカヴァーも演奏していたらしく、確かに英国トラッド&フォークに近い印象があり、とても美しく、そして暗い楽曲が並ぶ。ロック的なドロドロしたサイケ感覚は皆無である。特にシタール(?)入りの楽曲である「Vespers」が印象的だ。また、「October Road / Sleeping Magnifical」のようにミニマル風味のインストを演奏する楽曲もある。さらに終盤の展開が白眉であり「Revelation 13:11:18」はヨハネの黙示録を朗読する背後にて奇怪な電子音が響くというトラック、それに続いて「Songs of the Apocalypse」という暗示的なタイトルの楽曲で締めくくる。

Advertisements