Vital Signals 愛知巡回

第14回 アートフィルム・フェスティバル

 映画に代表される動きをともなった映像表現は、1895年、フランスのリュミエール兄弟が発明した「シネマトグラフ」が一般公開されたことを基点にするものといえるでしょう。その後映画は、劇映画やドキュメンタリー、実験映画といったジャンルを派生させつつ、これらジャンル固有の表現を深化させることで、進展してきました。そして現在、映画生誕から110年以上の年月が経過し、映像表現はまた大きな転換の時を迎えつつあるように思えます。
 1990年代から映画の制作現場に導入されるようになったデジタル・ビデオは、簡便かつ安価に、高画質の映像の撮影を可能にしました。当初、機材面における変化として受け止められていたデジタル・ビデオは、実のところ、映像表現そのものの有り様に大きな変化をもたらすものであったのです。フィルム時代には習熟した技能によってのみ生み出すことが可能であった、長時間切れ目なく運動を捉える長廻し撮影が、デジタル・ビデオ・カメラの登場により、一般家庭でも可能な表現へと変わってしまったことは、その一例といえるでしょう。
  こうした状況を踏まえつつ、今年の「アートフィルム・フェスティバル」では、アラン・レネ、ジャン・ルーシュ、クリス・マルケルらの作品により、ドキュメンタリーが事実の記録というよりも、現実を意識的に再構成したものであることを私たちに改めて認識させる〈フランス・ドキュメンタリーの精華〉、アーティストがビデオという当時のニュー・メディアに意欲的に取りくんだ動向として重要な、1960~70年代の初期ビデオ・アートの意義を再考する〈Vital Signals(ヴァイタル・シグナル) 日米初期ビデオ・アート作品集〉や、ホーム・ビデオも含むビデオ表現の現在を反映した〈「東京ビデオフェスティバル」セレクション〉、デジタル映像の浸透が制作環境を活性化しているインディペンデント系映像作品にフォーカスした〈自主制作映画の現在〉、短編という形式が持つ可能性がアニメーションから風刺的ニュアンスの実験映画まで、多様な作品を生み出している〈フランス発!新世代ショートフィルム〉など多彩なプログラムから、映像表現の混沌としつつも豊かな、今日的な状況を照らし出すことを試みます。
  また愛知芸術文化センターが、“身体”をテーマに毎年一本のペースで継続している映像作品の制作事業「オリジナル映像作品」の最新第18弾・寺嶋真里『アリスが落ちた穴の中 Dark Märchen Show!!』(2009年)の初公開も行います。19世紀イギリス的美意識を独自に先鋭化させた、自ら“ヴィクトリアン・アンダーグラウンド”と呼ぶ公演で知られるパフォーマンス・ユニットRose de Reficul et Guiggles(ロウズ ド レフィクァル エ ギグルス)と、少女趣味的耽美性と怪奇・幻想的志向を併せ持つ寺嶋がコラボレートし、ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』(1865年)を独自に読み替えた注目の作品です。

会期:2009年11月19日(木)~26日(木)、12月1日(火)~6日(日)
会場:愛知芸術文化センター12階 アートスペースA
料金:入場無料・申込不要(当日来場可)
主催:愛知芸術文化センター
企画:愛知県文化情報センター
協力:アリアンス・フランセーズ愛知フランス協会、横浜美術館、Electronic Arts Intermix(EAI)、NPO法人市民がつくるTVF、ぴあフィルムフェスティバル事務局、木村承子、鈴木拓哉、武子直樹、仲井陽、姫嶋聖治、三間旭浩、岡本珠希(カルトブランシュ)、名古屋シネマテーク、佐野画廊
特別協力:アメリカ大使館
http://www.aac.pref.aichi.jp/frame.html?bunjyo/jishyu/2009/aff14/index.html

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セクション1 
テクノロジー:新しい視覚言語
aプログラム:ビデオ言語論 10作品、約71分
シンセサイザーや画像プロセッサーなど、新技術を用いた映像や音響の創出。ビデオアート草創期、このメディアの技術的可能性を探求する様々な実験が展開する。
a-1:ナムジュン・パイク ベル研究所での電子映像実験 1966年/約5分
a-2:CTG コンピューター・ムービー No.2 1969年/約8分
a-3:ゲイリー・ヒル 電子言語学 1977年/約4分
a-4:松本俊夫 メタスタシス 新陳代謝 1971年/約8分
a-5:スタン・ヴァンダービーク ストローブ・オード 1977年/約11分
a-6:山口勝弘 イメージモデュレーター 1969年(再制作)/約1分(インスタレーションの記録映像)
a-7:山口勝弘 大井町附近 1977年/約2分(インスタレーションの記録映像)
a-8:松本俊夫 モナ・リザ 1973年/約3分
a-9:スタイナ&ウッディ・ヴァスルカ 腐蝕Ⅰ 1970年/約2分
a-10:安藤紘平 オー!マイ・マザー 1969年/約13分
         
bプログラム:拡張する形式 9作品、約78分
収録内容をその場で再生できる「リアルタイム・フィードバック」機能をはじめ、ビデオ固有のさまざまな特性が、映像制作のあり方を刷新していく。
b-1:ナムジュン・パイク (マース・カニングハム、チャールズ・アトラスとの共作) マース・バイ・マース・バイ・パイク:ブルースタジオ 1975-76年/約16分
b-2:山本圭吾 Breath No.3 1977年/約6分
b-3:ジェイムズ・バーン 半透明 1974年/約2分
b-4:飯村隆彦 カメラ、モニター、フレーム 1976年/約17分
b-5:ジョーン・ジョナス 左側 右側 1972年/約9分
b-6:飯村隆彦 オブザーバー/オブザーブド 1975-76年/約9分(抜粋)
b-7:飯村隆彦 男と女 1971年/約7分
b-8:ジェイムズ・バーン 両方  1974年/約4分
b-9:山本圭吾 Hand No.2 1976年/約8分

セクション2
オルタナティヴ・メディア:コミュニケーションの変容
cプログラム:テレビの解放 8作品、約82分
当時の文化を支配していた「テレビ」。アーティストや活動家は、テレビの特性を個人的な表現に取り込んで、マスメディアや政治といった巨大な存在に対峙する。
c-1:ナムジュン・パイク&ジャド・ヤルカット コマーシャルを待ちながら 1966-72/1992年/約7分
c-2:中谷芙二子 水俣病を告発する会-テント村ビデオ日記 1971-72年/約21分
c-3:松本俊夫 マグネティック・スクランブル 1968年/約1分(映画《薔薇の葬列》からの抜粋)
c-4:デイヴィッド・コート メーデー・リアルタイム 1971年/約9分(抜粋)
c-5:ビデオアース東京 橋の下から 1974年/13分
c-6:ダラ・バーンバウム テクノロジー/トランスフォーメーション:ワンダーウーマン 1978-79年/約6分
c-7:クリス・バーデン TVコマーシャル 1973-77 1973-77年/2000年/約4分
c-8:TVTV あと4年(ニクソン再選運動の記録) 1972年/約23分(抜粋)

dプログラム:共有される記憶 7作品、約52分
個人の日常から歴史的事件まで、撮影者はカメラを媒介してあらゆる被写体とその場の経験を共有し、残された映像は不特定多数の人々の記憶の中に共有されていく。
d-1:久保田成子 ヨーロッパ・オン・1/2インチ・ア・デー 1972年/約9分(抜粋)
d-2:中島興 マイ・ライフ 1976~92年/約5分(2チャンネルビデオインスタレーションからの抜粋)
d-3:アント・ファーム アント・ファームの汚れた皿 1971-2003年/約9分
d-4:アラン・カプロー Hello 1969年/約5分
d-5:シャーリー・クラーク ティー・ピー・ビデオ・スペース・トループ パート1 1970-71年/約5分
d-6:中谷芙二子 老人の知恵-文化のDNA 1973年/約11分/映像提供:川崎市市民ミュージアム
d-7:ビデオインフォメーションセンター ラ・アルヘンチーナ頌 1977年/約5分(抜粋)
セクション3
パフォーマンス:行為の記録、身体の記録

eプログラム:ビデオと行為 8作品、約74分
1960年代以降、「行為」そのものを作品に取り込んでいったアーティストたち。そして彼らにとって格好のメディアであったビデオ。様々な行為の痕跡が映像に刻まれていく。
e-1:かわなかのぶひろ キック・ザ・ワールド 1974年/約15分
e-2:山口勝弘 Eat 1972年/約2分
e-3:マーサ・ロスラー キッチンの記号論 1975年/約6分
e-4:今井祝雄 ビデオ・パフォーマンス1978~1983 1978-83年/約16分
e-5:デニス・オッペンハイム アスペン・プロジェクト/圧縮-シダ(顔) 1970年/約5分
e-6:ウィリアム・ウェグマン 作品選集1 1970-72年/約8分(抜粋)
e-7:ジョン・バルデッサリ アートの作法:葉巻辞典 1973年/約6分(抜粋)
e-8:小林はくどう ラプス・コミュニケーション 1972年(1980年再制作)/約16分

fプログラム:ビデオと身体 8作品、約63分
パフォーマンスの記録に活用されたビデオ。それは単なる記録を超え、時間的・空間的・造形的な加工・操作によって、パフォーマーの身体表現を拡張・純化させていく。
f-1:ヴィト・アコンチ 粉/息 1970年/約3分
f-2:ポール・マッカーシー 黒と白のテープ 1970-75年/約5分(抜粋)
f-3:村岡三郎+河口龍夫+植松奎二 映像の映像-見ること 1973年/約13分
f-4:ジョーン・ジョナス オーガニックハニーの垂直回転 1973-99年/約15分
f-5:出光真子 おんなのさくひん 1973年/約11分
f-6:ブルース・ナウマン ピンチネック 1968年/約2分
f-7:アンテ・ボザニッチ アイ・アム・ザ・ライト 1976年/約4分
f-8:和田守弘 認知構造・表述 1975年/約10分(抜粋)

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Vital Signals上映スケジュール
12月2日(水)
18:00(aプロ)/19:10(bプロ)
Vital Signals:日米初期ビデオ・アート作品集1
テクノロジー:新しい視覚言語
aプログラム:ビデオ言語論
bプログラム:拡張する形式

12月3日(木)
18:00(cプロ)/19:10(dプロ)
Vital Signals:日米初期ビデオ・アート作品集2
オルタナティヴ・メディア:コミュニケーションの変容
cプログラム:テレビの解放
dプログラム:共有される記憶

12月4日(金)
18:00(eプロ)/19:10(fプロ)
Vital Signals:日米初期ビデオ・アート作品集3
パフォーマンス:行為の記録、身体の記録
eプログラム:ビデオと行為
fプログラム:ビデオと身体

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愛知芸術文化センターにて開催されている第14回 アートフィルム・フェスティバルにて、Vital Signalsの愛知巡回上映が行なわれます。名古屋を不本意な形で去ることになってしまってから、もう半年以上経ちますが、このような形で愛知芸術文化センターで上映することができて嬉しく思います。
名古屋にいた頃には、アートフィルムフェスティバルは毎年、連日観に行っていた。今年のプログラムもジャン・ルーシュなど素晴らしい作品が並んでいる。観たかったと思う。もう、ぶらりと自転車で出かけて、ピーカンとちくさ正文館に寄ってから芸文センターに行って最前列右寄りのいつもの席に座ることはできない。