Germaine Dulac – La coquille et le clergyman


(Light Cone / DVD)

本作はジュルメーヌ・デュラック(Germaine Dulac)の『貝殻と僧侶/La coquille et le clergyman』 (1928)の新しいDVDバージョン(http://www.lightcone.org/fr/la-coquille-et-le-clergyman.html)であるが、どうしてわざわざDVDを購入し直したのかといえば、サイレントであったオリジナルに、新たなサウンドトラックが加えられているからなのだけど、これが興味深い。メニューからは三つのサウンドトラックを選択出来る。パスカル・コムラード(Pascal Comelade)、トマス・コナー(Thomas Köner)、Iris ter schiphorst。最後の音楽家は知らないが(現代音楽系のコンポーザーらしい)、前の二人が『貝殻と僧侶』に音楽を付けるとなれば聴きたくなっても仕方ない。

映画の方は、アルトーの脚本による、「最初のシュルレアリスム映画」とも呼ばれる古典的アヴァンギャルド映画。しかし、デュラックによって自分の脚本が内面的な夢のレベルへと矮小化されたと感じたアルトーは激怒し、上映会場に現れて暴言を吐き散らかしたとされている。内容の方は、ある男が、ある女と一緒にいた僧侶を嫉妬から殺害するというエピソードを基軸に、奇妙な出来事とイメージが溢れ出してゆくというもの。確かにアルトーが不満を持ったように、映画自体の安定性が脅かされることはなく、「夢」として説明付けることが可能な、ある種の整合性を持った映画といえなくもない。とはいえ、本作に先行する前衛的な短編作品で知られる、アヴァンギャルド映画作家としてのデュラックの作品が持つ革新性は、決して低いものではない。(デュラックの他作品のプレヴューも含めて以下で観ることができる。その幅は広い。 http://www.lightcone.org/fr/cineaste-99-germaine-dulac.html

問題の音楽の方についてであるが、パスカル・コムラードの音楽は、玩具箱をひっくり返したような、ローファイでポップな音楽的断片の羅列。最初は意外性があり面白くもあったが、だんだんとサントラが画面の説明になっているというか、音楽が映像に説明を加えているという関係が、分かりやすく透けて見えるように思えてきて、退屈してしまった。しかし、トマス・コナーの音楽の方は飽きなかった。トマス・コナーはMille Plateauxからのリリースや、Porter RicksとしてのChain Reactionからのリリースでも知られるが、メディアアーテストとしても『Nuuk』(2004, the Tiger Cub Award (best short film) during the International Filmfestival Rotterdam 2005)などのビデオ作品を制作しているマルチな作家である。そちら方面の活動をどう評価するかはさておき、彼はサイレント映画にサウンドトラックを付けるプロジェクトも行っており、これもその一環である。

彼の音楽は、基本的に砂塵のような電子音によるドローンなのだが、これがフィルムとの面白い組み合わせになっている。サイレント映画のサウンドトラックにありがちな、コミカルであったり、抒情的であったりする室内楽とは異なる、フィルムを貫く重苦しいドローンノイズ。サウンドトラックとフィルムが異物として作用し合い、それによって(シュル的にいうならば)現実ともう一つの現実の界面としてのフィルムは揺らぎ、痙攣する。それなりの音響とプロジェクションで観るならば、このDVDを観る者は現実が異化されてゆくような感覚に陥ることが出来るだろう。傑出したコラボレーション——とまでは行かなくとも、なかなか面白い試みには違いない。

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