爆音3D映画祭/『2012 act.5』ライヴ上映+『Still in Cosmos』

爆音3D映画祭
牧野貴『2012 act.5』ライヴ上映+『Still in Cosmos』 
※フィルターによる3D化

『2012 act.5』とは、初夏の爆音映画祭でも上映&演奏された『2012 act.3』の続き。 続編ではなくて、上映されるたびに再編集、追加されて2012 年を成長し続け、2012年が終わった時点で完成、という作品。「act.5」とは今年5回目の上映ということ。当然、監督本人によるライヴ演奏も。それに加え、入場時に配布される フィルターを目の前にかざすことにより、作品の見え方が大きく変化する、その立体感と変容の具合もお楽しみくださいとのこと。09 年の作品『Still in Cosmos』も、やはりフィルターで一気に見え方が変容。その困惑と混乱とカオスの宇宙の中に、再度引き込まれることになるでしょう

11月14日(水曜日)21:30-22:30
吉祥寺バウスシアター
料金2,000円

牧野貴の『still in cosmos』と新作『2012.act.5』が、11月14日に吉祥寺バウスシアターにて通常上映ではなく3Dによって上映される。これを先取りしたといえる試みは、今年2月のイメージフォーラムシネマテークで行われた、ヨハン・ルーフの特別講義(「映像作家ヨハン・ルーフによる3Dワークショップ」)のなかにもあった。
この講義は、立体視をスペクタクルのための装置として使用するのではなく、いままでに試みられてきた平面映像における実験的な空間表現の延長線上で、どのように捉え直せるのかということを問うものであった。これは、現実に準ずるリアリティを演出しようとする立体映像の潮流に反発して、映画によってしか可能とされない、別の空間表現への可能性を拓くものである。この講義の中で参考として示された映画は以下の通り。クラシックから、ケン・ジェイコブスのような著名な作家、近年の作家まで幅広い。しかし、いわゆる3D商業劇映画が挙げられていないところに、その意図がよく表れているだろう。

1:G.W. “Billy” Bitzer – Interior New York Subway, 14th Street to 42nd Street (1905)
2:Claude Lelouche – C’était un rendez vous (1976)
3:Johann Lurf – Vertigo Rush (2007)
4:Guido van der Werve – Nummer Acht (2007)
5:(失念)
6:Ken Jacobs – Capitalism Slavery (2006)
7:J.L.Godard – Weekend (1967)
8:Johann Lurf – A to A (2011)
9:牧野貴 – still in cosmos (2009)

以下にそれぞれの作品のポイントを簡潔にまとめる。

1:地下道を走行する列車をドリー撮影で追尾する。移動撮影が可能になった事で、被写体を中心とした運動が可能とされている。被写体を中心とした、ある空間における基準点の相対化。
2:市街地を暴走する車両にカメラを取り付けて、長時間のワンショットで映画を展開させる。カメラの移動を中心として、パースペクティヴをどのように構成(演出)するかということ。長回しの空間移動は、スノウ『波長』における空間の圧縮と同質なのかもしれない。
3:森林の中で、ズームアウトをしながらドリーイン/ズームインしながらドリーアウトを繰り返すカメラ。目眩を覚えるような視点の前後移動を、徐々にバルブ撮影によって変容させる。被写界の溶解。
4:氷河の上を歩く人物と、後方の氷河を割って進む大型船と、隠蔽されたカメラの相対的な関係性の検証。その関係性の帰結としての映像。
5:(失念)
6:視差を利用した古い立体写真を、左右交互に数フレーム単位で置き換える事で、擬似的な立体視を生み出す。(ちなみに、これは片目でも立体視の感覚を得る事が可能。)

1〜5までの映画で問われているのは、空間において被写体とカメラの関係をどのように構築するのかということであり、それぞれの作品は、それぞれのやり方で平面映像のなかに空間的な秩序を形成している。立体感というものは平面映像であっても、構成(演出)によって様々な立ち表れ方をする。その上で、それらの試みを延長するものとして、6のケン・ジェイコブスによる奇妙な立体視映画を例示する。この例示の流れは見事なもので、立体視という技法に対する固定観念をすっきりと解体させるものだった。立体視は、興行目的のスペクタクルのための装置ばかりではないのである。

そして次に、7〜8の映画となる。プルフリッヒ効果を生むための減光フィルターが観客に配布されて、『ウィークエンド』の横方向へのパンのショットと、車両用ロータリーをぐるぐる回りながら撮影したヨハン・ルーフの『A to A』、1ピクセル単位の微粒子が縦横無尽に運動する牧野の『still in cosmos』という三つの参考例が上映され、立体視の実験が行われる。このなかでも『A to A』と『still in cosmos』における立体視の効果は絶大であり、特に『still in cosmos』においてそれは、細かな微粒子が無限に続くような奥行きのレイヤーを持って観客の眼前に出現しており、驚異的な経験となった。

『still in cosmos』は、微細な光の運動のなかから、様々なイメージを観客に与えるような豊穣な映画である。その映画を、今回は劇場サイズのスクリーンと大音響で、プルフリッヒ効果を伴って上映しようという訳である。また、2012年を通して制作が進められている、日々生成する映画である『2012.act.5』も同じ条件でライヴ上映されるという。驚異的な映画的空間の生成によって、観客の視覚を激しく揺るがす試みになることは間違いないだろう。

また、『2012.act.5』については、遂に一部でフルデジタルでの映像制作に踏み切っており、制作環境の変化による、表現の変化の有無も気になるところだ。(よく勘違いされるので念のために述べておくと、私は、外的な要因によって作家が足掻くように変化することに関心があるのであり、素朴にデジタル環境を賛美しているのではない。)

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