イメージフォーラムフェスティバル2013 Oプロ:リヴァイアサン

Leviathan (trailer) from Cinema Guild on Vimeo.

・リヴァイアサン – ルシアン・キャステイン=テイラー+ヴェレーナ・パラヴェル
Leviathan – Lucien Castaing-Taylor and Verena Paravel
(アメリカ/フランス/イギリス, HD, 87min, 2012)

二人の監督、ルシアン・キャステイン=テイラーとヴェレーナ・パラヴェルは文化人類学系の大学研究機関に所属している人物であるということで、彼らを文化人類学者・映画作家であったジャン・ルーシュの系譜のうえに配置することは容易であろう。現在も文化人類学の領域では研究対象となる集団を映像によって記録することが一つの方法論として定着しているようで、映像人類学なる領域もある。そのような映像は研究上の記録としてではなく、独立した作品として発表されることも多いようだ。

しかしながら本作は、いわゆる既存の映像人類学的なドキュメンタリーの範疇に留まるものでない。これは、ある種の実験映画的側面と文化人類学的側面を併せ持った、ひとつの興味深い「映画」となっている。それは撮影の現場におけるカメラと被写体の関係と、そのフッテージを作品として構成する際の明確な意図によるものである。映画の舞台となるのはマサチューセッツ州ニュー・ベッドフォード沖の商業漁業船であるが、舞台設定は重要ではない。本作で主題化されている被写体は、過酷な海上の自然と、そこにおける人間の労働そのものである。画面はローキーに寄っているので、作品全編を通して暗闇が強調されている。その暗闇のなかから浮かび上がってくる荒々しい波と巨大な船影は、そこで作業する人間の視点によって捉えられたものではない。水揚げされた瀕死の魚の視点、海上を飛ぶ海鳥の視点、海に浮かぶ巨大な鉄の塊を見上げる海上からの視点、無機的な運動をする船上のクレーンからの視点など、殆どの場面において、それは極めてミクロな視点から撮影されている。このラジカルなアプローチは、言葉通りの意味において実験映画的なものであるといえよう。このアプローチによって商業漁業船の営みが、巨大な海の怪物“リヴァイアサン”の生態観察のように捉え直される。人間社会の営みを自然の側から観察したとすれば、それはこのような暴力的なものに他ならないだろう。

このユニークな映像は、人から教えてもらった話によると、どうやら大量の「GoPro」で撮影されたものらしい。「GoPro」とは、防水・防塵の小型カメラであり、プレイヤー視点でのスポーツ撮影や、通常の撮影クルーでは撮影できないような過酷な自然環境下で使用されている。その高性能化は凄まじいことになっており、小箱程度のサイズでありながら、[1920×1080 60P/48P/30P/24P]というハイビジョンの基本スペックは勿論のこと、2.7Kから4Kまでの画面サイズをフォローしている。この小型カメラをヘルメットやクレーン、あるいはチェーンやロープに取り付けることで、極めてミクロな視点より、異常なまでの高解像度で空間全体を捉えた撮影が可能となる。また、このカメラは水中に浸けることも可能なので、水槽のなかに半分水没させることや、海中に投げ込んで船を撮影することも可能。それによって平衡感覚が狂うような、異様な空間的拡がりを持った映像が表現されている。カラー。サウンドは基本的に同時録音であり、BGMやナレーションは一切なし。

以下、具体的な内容について気になったところを箇条書きでメモしたもの。作中の順番ではありません。

・真っ暗闇の海上での漁業。網上げ機による作業の様子が撮影される。基本的にワンショット長回し。
・一服する乗組員。水揚げされた生物の視点から見た作業の様子。
・港での荷下ろし。荷に取り付けられたカメラ。
・餌を求めて生け簀に這い上がろうとするカモメや、床に転がった魚の頭部が、床に無造作に置かれたカメラによって撮影される。
・船内から海上への排水を、船外壁面に取り付けられたカメラから撮影。
・生々しい解体加工の様子と、乗組員の刺青。
・シャワーを浴びる乗組員。休憩室で眠りこける乗組員。
・ラストの長回しによって撮影された飛行する水鳥の群。クレーンかポールに取り付けたカメラによって撮影されている。天地が逆であり、それによって奇妙な浮遊感のある映像になっている。波間から浮かび上がって水鳥の群に接近したのち、再び海中へ水没。

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