それとも、まだ

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派遣労働者を増加させ、彼ら彼女らが安定した仕事に就ける機会をなくし、その一方で年金を払えなければ財産を差し押さえる方針だそうだ。あまりに無茶苦茶だ。まともな仕事もなく、年金も払えないという経験を一度でもしたことのある人間なら、この強烈な憤りを共有できると思う。

国会が閉会してまだ数日なのに、箍が外れたよう連日悪いニュースが届けられているが、現政権は明確に覚悟を決めているのだと思う。与党好みの政策を実現させることと引き換えに、景気の浮揚を期待していた人たちは、望み通り好景気による経済的恩恵を受けたのだろうか? 全体性への憧憬を惹起され、統治の強化を歓迎していた人たちは、その統治によって自分が全体のなかでどの部分に位置付けられるのか把握しただろうか? それとも、まだ、あなたの立っている場所は大丈夫だったりするのだろうか?

・国民年金滞納者、差し押さえ…予告督促状送付へ(2013年12月12日  読売新聞)
 厚生労働省は12日、国民年金保険料を指定された期限までに納付しない滞納者全員に対し、財産差し押さえを予告する督促状を送る方針を固めた。

引用元: 国民年金滞納者、差し押さえ…予告督促状送付へ : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞).

・派遣:「常用」可能に…3年ごとに人代え 厚労省骨子案(2013年12月12日 毎日新聞)
 労働者派遣法の改正を審議している厚生労働相の諮問機関、労働政策審議会労働力需給制度部会(部会長・鎌田耕一東洋大教授)に12日、改正に向けた骨子案が提示された。正社員の仕事を派遣労働に置き換えることを防ぐ「常用代替防止」のルールを大きく緩和する内容。民主党政権下の2012年10月に規制を強化する方向の改正派遣法が施行されたばかりだが、厚労省は来年の通常国会への法案提出を目指す。派遣労働者の増加による雇用の不安定化も予想され、労働側から強い反発が出るのは必至だ。

引用元: 派遣:「常用」可能に…3年ごとに人代え 厚労省骨子案 – 毎日新聞.

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未来への弔い

参議院で特定秘密保護法案が通過した翌日、映像論に関する講義の一環として学生らと映画館に行った。今年のテーマは「映画と社会」であり、たまたま『風立ちぬ』がまだ稚内では上映していたので、ちょうど良いと考えての事である。『風立ちぬ』を題材として、戦前と震災以降の日本社会の類型性を読むことは、この講義の締めくくりとしても適当だと思った。『風立ちぬ』については、夏にこのブログでも思う事を書いた。しかし、現政権の方針により、この国の先行きが見えてきたということもあって、私のなかでも心境の変化があったのだろう、改めて観た『風立ちぬ』の印象は、夏に観たときのそれとは異なるものだった。今回は観ている途中あたりから、無性に悲しくなった——「この国は、なんて悲しい国なんだろう」と。そして、この映画はいわば避けられない次の災いに捧げられた、未来への弔いなのだと思えた(震災前に構想されていた作者の意図とは異なるだろうが)。日本人は結局、根底の部分で変わることはできなかった。次の災いは避けられないのだから、それまでの限られた時間を(二郎と菜穂子の最後の日々のように)大切に生きなさい——特定秘密保護法案採決の翌日にこの映画を観た私は、この映画をそのように意味付けた。

思えば昔、漫画版ナウシカのラストを読んだときに、私はそのストーリーの帰結に納得しながらも、すんなり受け入れる事のできないものをそこに感じていた。漫画版ナウシカの終盤のストーリーとは、世界が浄化されたときに不可避なものとして訪れる人類の滅びを、人類自らが選択するというものである。私はその絶望的な帰結に、どうして作者はそこまで諦観した地点に立てるのだろうと、恐ろしいものを感じた。希望や可能性といったものがまるでない暗黒の世界に向かって歩み出しながら、「生きねば」と唱えること。それは、まるで自殺すら許されないまま生きろという、絶望的な宣告のように聞こえて恐ろしかった。しかし、今ならその恐ろしさも少しは理解できる。

全体主義的な傾向に対する親和性。これは多分、歴史的要因とも深く結びついた日本人の精神的な特性なのだろう。震災以降の社会の動きを見ていれば、それはあまりに明白だ。なぜ日本が太平洋戦争になだれ込んでいったのか、その時代の空気感を今ならリアリティをもって想像できる。戦後はおそらく東日本大震災・原発事故によって終わらされていたのであり、新しい戦前はその時すでに始まっていたのだろう。この二年半という期間は、それを戦前として認識できなかっただけなのだ。5年後か、10年後かは知らないが、災いは形を変えてまたやってくるだろう。それは、個よりも全体性に惹き付けられてしまう日本人にとって、避けられない災いなのだと思う。そういえば劇中にて、「小さくても亀として生きられないのかな」という台詞があったが、結局日本人はそのようには生きられなかった(原発すら捨てられなかった)。だから私は「なんて悲しい国なんだろう」と感じたのである。近い将来、アジア圏における自由主義・民主主義国が実質的に一つ消え去ること(それも自分から進んで)。それはアジア圏の外側の国々から見て、どのような意味を持つだろうか。あまり悲観するつもりもないが、楽観するつもりもない。それでも私たちは、諦観を受け入れたうえで「生きねば」と呟くしかないのだろう。

特定秘密保護法案について

特定秘密保護法案に反対する学者の会
http://anti-secrecy-law.blogspot.jp/

賛同署名しました。11月30日17時時点で総計1316名が賛同しているとの事です。上記ウェブサイトではまだ賛同者を募っています。第二次記者会見は12月3日に予定されているとのことです。(11月30日)

・「秘密国家へ道、廃案に」分野超え、ノーベル賞学者ら会結成(東京新聞 2013年11月29日)
 高まる懸念を置き去りに、衆院で採決が強行された特定秘密保護法案の成立を阻むため、学者らが分野を超えて決起した。二人のノーベル賞受賞者を含む三十一人が「特定秘密保護法案に反対する学者の会」を結成。「法案は憲法の基本的人権と平和主義を脅かす立法で、直ちに廃案とすべきだ」との声明を二十八日発表した。

引用元: 東京新聞:「秘密国家へ道、廃案に」 分野超え、ノーベル賞学者ら会結成:社会(TOKYO Web).

・秘密保護法案廃案を 益川氏ら研究者が声明(NHK 2013年11月29日)
 ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英氏など、さまざまな分野の研究者が特定秘密保護法案の廃案を求める声明を発表しました。

引用元: 秘密保護法案廃案を 益川氏ら研究者が声明 NHKニュース.

追記:
12月5日2時時点で、総計2812名が賛同しているとの事です。上記ウェブサイトではまだ賛同者を募っています。以下、それについての報道。(12月5日)

・研究者ら2000人超が秘密法案廃案賛同(NHK 2013年12月3日)
 特定秘密保護法案を廃案にするよう求めているノーベル賞受賞者などさまざまな研究者で作るグループは、これまでに国内外の2000人以上の研究者から賛同が寄せられたことを明らかにし、「戦後最大の民主主義の危機だ」として改めて廃案を訴えました。

引用元: 研究者ら2000人超が秘密法案廃案賛同 NHKニュース.

追記2:
加えて、12月4日夕刻の公聴会を経て、12月5日1時から4時にかけて開催された参議院本会議にて、野党委員長が二名解任されました。ネット中継を徹夜で見ていたんですが、要するに法案を通すために、深夜の参議院本会議にて与党が内閣委員会委員長の首を飛ばしたということです。与党が多数によって民主的合議の担保としての議会慣例を破棄する態度を明確にしたということは、地味に見えて結構重要な変化だと思えます。(12月5日)

・参議院:民主の2委員長解任 後任は自民が占める(毎日新聞 2013年12月05日)
 会期末の6日をにらみ与野党攻防が激化した参院は、4日から5日早朝近くまで断続的に本会議を開き、民主党の水岡俊一内閣委員長と大久保勉経済産業委員長の解任決議案を与党の賛成多数で可決した。後任に自民党の山東昭子内閣委員長と北川イッセイ経産委員長を選出した。野党の委員長を解任したのは衆参両院で初めてで、与党がポストを奪う極めて異例な事態となった

引用元: 参議院:民主の2委員長解任 後任は自民が占める- 毎日新聞.

Space Noise 3Dインスタレーション + 上映イベント「軌道を外れた宇宙の塵」

世田谷区池尻にあるギャラリーCAPSULEにて、牧野貴の『Space Noise』3Dインスタレーション版の展示が行われます。あわせて、もう満席なのですがオーストリアのKONTRASTE FESTIVALで初演されたヴァーチカルシネマ、『Deorbit』を上映するイベントが最終日にあります。KONTRASTE FESTIVAL初演は35mmフィルムの垂直上映でしたが、今回はビデオ版での上映ということです。ヴァーチカルシネマについてはこちらを参照。
https://centralregionblog.wordpress.com/2013/10/14/vertical-cinema-kontraste-festival/

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3D映像インスタレーション『Space Noise』2013年/8分/ループ上映 映像・音楽:牧野貴
日時:12月5日~7日 12時~19時(最終日のみ18時半終了)
会場:CAPSULE
〒154-0001 東京都世田谷区池尻2-7-12
田園都市線池尻大橋駅南口より徒歩8分、世田谷線三軒茶屋駅北口より徒歩10分
http://www.tokyoartbeat.com/event/2013/155F?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

上映イベント「軌道を外れた宇宙の塵」
『Deorbit』 2013年/17分/1:1.85 ヴァーティカル作品 映像・音楽:牧野貴&Telcosystems ドラム演奏 : Balazs Pandi (from Merzbow)
日時:12月7日(土)19時より20時 ※予約満席
 8カ国を巡り、12回の上映と6回の『SpaceNoise』のライブパフォーマンスを行ったヨーロッパツアーの報告、そして牧野貴が2013年に関わった最大の企画「垂直映画」についてのレクチャー及び最新作『Deorbit』の日本初上映(ビデオ版)を行います。