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マルセイユ4日目の朝。シレイラ氏は昨晩より外泊中なのだが、朝起き出してみると、既に瀧氏がこのレジデンスでは定番の近所のパン屋特製のクロワッサンを買ってきてくれていた。心底感謝する。

皆で朝食をとったあと、この日の午前中もやっぱりマルセイユを歩き回ることにして、早々に一人で出発する。この日は旧港の左側を歩いてみようと思って、サン・ニコラ要塞を目指す。(旧港の入り口の両端には二つの要塞があって、海に向かって右がサン・ジャン要塞、左がサン・ニコラ要塞となっている。)サン・ニコラ要塞の中には入れなかったが、高台から旧港全体を見下ろすことができる。
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次に、要塞の側にあるサン・ヴィクトール修道院に向かう。ここは5世紀に遡るらしい古い様式の修道院で、3ユーロを払えば地下礼拝堂を見学することができる。地下礼拝堂には石棺や黒いマリア像などが安置されており、薄暗く不思議な空間だった。
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次に土産物のマルセイユ石鹸などを吟味しながら、旧港をぐるっと回って、「マルセイユ=プロヴァンス2013」のメイン会場である、巨大倉庫を改装したJ1に向かう。
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ここでは12月22日まで、ル・コルビュジェ展「LC au J1. Le Corbusier et la question du brutalisme」が開催されている。雨が降り出しそうだったので、駆け足で移動して、何とか降られないで済んだ。展覧会の内容は、森美術館でやっていたような建築に焦点を当てたコルビジェ展と比較して、絵画や彫刻が多数展示されているのが興味深い。マルセイユの人たちにとってのコルビジェとは、地元の誇りに結びついてくるような人物なのだろう。多くの人で賑わっていた。(公式サイトは次の通り http://www.mp2013.fr/le-corbusier/)。

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展覧会を観終わった辺りで雨も止んで、ちょうどいい時間になったので、フリッシュ・ラ・ベルドメに引き返す。

ところで、私は13日までマルセイユに滞在して、オランダ経由で帰国する予定だったのだが、よくよく考えるとザンスタンビデオの会期自体は11日までである。なぜ13日まで滞在する事にしたのか、旅程を決めた時期が忙しかったこともあって、正直よく憶えていない。多分、深く考えないで思いつきで決めたのだろう…。なので、この日になって「そうだ、パリにも寄ろう」と決めた。今回の旅費は補助金から出ており、滞在費も先方が持ってくれている。ちょっと恵まれ過ぎなので、パリに寄る分くらいの旅費は自腹で負担してもいいや、と考えてのことである。

という訳で、フリッシュ・ラ・ベルドメに戻って、流暢なフランス語を操るマイケルさんに助けてもらいながら、エールフランスと直接交渉して、航空機のチケットを変更するなど諸々の手続きを済ませる。そのため、午後2:00からのアルゼンチンのビデオアート特集「Terr(h)istories of video arts : Argentina」と、午後3:00からのイランのビデオアート特集「Terr(h)istories of video arts : Iran」は一部しか見られなかった。しかし、観る事ができたアルゼンチン特集のなかで興味深い作品が一本あったので、それについてはレビューしておく。

Sebastián Díaz Morales - Insight
・Sebastián Díaz Morales – Insight (2012, 10’)
本作もまた昨日のスイス特集で観た作品と同じく、歴史的な意味でのビデオアートらしさ(メディアへの批評性や、ポストモダン的な混交性)よりも、別の文脈——本作の場合はショートムービーではなく、実験映画的な文脈だが——の影響を感じさせる作品だった。まず、ビデオカメラレンズ部のクローズアップから作品はスタートする。それが徐々にズームアウトしてゆき、この場の状況が、映画撮影クルーの様子を撮影しているという状況であることを観客は理解する(ほとんど静止したかのような超高速撮影で捉えられている)。次に、突然画面に亀裂が入り、この映像そのものが鏡に反射した像だったことが明らかになる。鏡の砕け散る様子が、超高速撮影で緻密に捉えられる。次に鏡に反射していた実体としての映画撮影クルーの様子が画面に映し出される(ちなみに、実体なので左右が反転している)。そのフレームは徐々にズームインしてゆき、スタートと同じくビデオカメラレンズ部のクローズアップに到達する。そして作品は終了する。虚像と実像の関係、視覚的制度の脆さをコンセプトとした点で興味深い作品。ハイビジョンで撮影されているので、超高速撮影によるスローモーションが莫大な情報量をもって視覚を圧倒してくる。カラー/サウンド(ドローン)。本来はインスタレーションとして提示されることを想定した作品であるようだ(公式サイトは次の通り http://www.sebastiandiazmorales.com/sebastiandiazmorales/Insight.html)。

午後4:00過ぎからはモロッコのビデオアート特集「Terr(h)istories of video arts : Morocco」があったのだが、通訳の方々との打ち合わせのため、これも観る事が出来なかった。この日、通訳してくださるのは先日紹介されたケイトさんと、この日初めて紹介されたヤンさんという方。ヤンさんの自己紹介は、いきなり「はじめまして、元ヤンのヤンです」というもので、そのスラング混じりの駄洒落センスに大変親しみを覚えた。という訳で、午後5:00からの「Terr(h)istories of video arts : Japan」が始まった。

つづく。

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