11/10 – 2

さて、午後5時からの日本のビデオアート特集「Terr(h)istories of video arts : Japan」であるが、これは2013年3月に東京のアンスティチュ・フランセで上映したプログラムを元に組み直したものである。一つでも多くの作品を上映したいと思って、上映時間が長い作品については作家の許可を得て、抜粋上映とさせてもらった。また、マイケルさんのトーク時間をなるべく長く取るようにした。マイケルさん曰く「自分のような海外から移住した作家は、どちらの国の歴史にも含まれなかった」というのが実情らしいので、マイケルさんの来日前の活動と、その後の日本のビデオアートの展開を繋げるような形で、こういう機会を持つことができたことは、本当に良かったと思う。

まず、マイケルさんが参加していたカナダのビデオアートブループ〈インターメディア〉の活動を紹介して頂いてから、簡単な解説の後、日本のビデオアートプログラムを上映した。パンフレットにある上映プログラムは初期案のもので、最終的な上映プログラムは以下の通り。初期案は出光さんの作品と河合氏の作品のあいだに、80年代~90年代の作品を組み込んだものだったが、直前になって少し考えが変わって、震災・原発事故以降の状況におけるビデオアートの社会的意義を提起してみたくなり、80年代の作品をカットして、前田真二郎氏企画の『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW』から、震災以降に制作された2作品を加えてみた。河合氏の質疑も盛り上がり、プログラム終了後に観客から『BY&T』について話しかけられたりと、レスポンスは良かったので、うまく日本のビデオアートの全体像をコンパクトにプレゼンテーションすることが出来たのではないかと思う。英仏の翻訳を行ってくれたケイトさんとヤンさんに感謝。

・Michael Goldberg – Intermedia sampler 1972 (2 minute)
・Katsuhiro Yamaguchi – Image Modulator  1968 (1 minute)
・Kohei Ando – Oh My Mother  1969  (extrait de 4 minutes)
・Katsuhiro Yamaguchi – Eat  1972  (1.5 minutes)
・Nobuhiro Kawanaka – Play Back  1972  (1 minutes)
・Fujiko Nakaya – Friends of Minamata Victims (extrait de 5 minutes)
・Toshio Matsumoto – Mona Lisa  1973  (3 minutes)
・Tatsuo Kawaguchi; Saburo Muraoka; Keiji Uematsu – Image of Image-Seeing  1973  (extrait de 4 minutes)
・Ko Nakajima – My Life  1976  (extrait de 3 minutes)
・Takahiko Iimura – Camera, Monitor, Frame  1976  (extrait de 4 minutes)
・Mako Idemitsu – Another Day of a Housewife  1977  (extrait de 3 minutes)
・Masayuki Kawai – About a Theological Situation in the Society of Spectacle  2001  (6.5 minutes)
・Shinjiro Maeda – BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW #09 ONAGAWA  2011  (5 minutes)
・Ikeda Yasunori – BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW A Quiet Day  2011  (5 minutes)

そして、一仕事終えた脱力感のなか、午後8:45からのクロアチアのビデオアート特集「Terr(h)istories of video arts : Croatia」を観る。近年の作品がかなり多い。興味深かった作品は以下のとおり。

Goran Trbuljak - Untitled (Cut)
・Goran Trbuljak – Untitled (Cut) (1976, 0’30)
ポーターパックの、回転するオープンリールを鋏で切る。サイレント/モノクロ。

・Sanja Iveković – Personal cuts (1982, 3’44)
ストッキングを頭にかぶった女性が、鋏でその一部を切るパフォーマンスを行う。切断の度に、ヨシップ・ブロズ・チトーについてのTV番組から取られたファウンドフッテージが挿入されるという政治的な作品。カラー/サウンド(一部でフッテージ元のサウンド)。MoMAのサイト(http://www.moma.org/explore/inside_out)にて全編を観られます。

・Zlatko Kopljar – Love Shot (1996, 3’24)
暗闇で撮影されたノイズ混じりの映像。男が弾丸をポケットに入れて、夜道をドライブする。そして銃に弾をつめて、野外の暗闇に向かって撃つ不穏な作品。この弾丸には多国籍の言葉で「Love」と彫られており、作家のコンセプトによると、「Love」と刻まれた弾丸が、大地に落ちて新たな芽を出すとされるが…それにしては不穏すぎる。モノクロ/サウンド。作家のサイト(http://kopljar.net/projects/love-shot)にて、スチルを観る事ができます。

・Ivo Dekovic – Ivan has no need of TV (1997, 9’52)
71歳になる盲目の老人が、月夜にオリーブを獲りに行く。それに同行したドキュメント。映像は殆どが暗闇によって占められる。カラー/サウンド。

・Slaven Tolj – Nature & Society (2002, 4’)
トナカイの角を持った作家が、それを頭に当てて両手に持ち、壁に向かって打ち付けるというパフォーマンスの映像。カラー/サウンド。

・Nadija Mustapić – An Afternoon Without Gravity (2011, 15’35)
2面のスクリーンにて、廃墟のなかを歩く女性の様子が映し出される。左右のスクリーンは別アングルからのショットとなっており、被写体の運動は重層化されることになる。本来はインスタレーションとして上映される作品のようなので、この日観たスクリーン上映版ではなく、インスタレーション版の記録を貼っておく。カラー/サウンド。詳細は作家のサイト(http://www.nadijamustapic.com)を参照のこと。

・Tanja Deman – Abode of Vacancy (2011, 6’55)
モダニズム建築が生み出す空間性に着目し、フィックスショットで撮影した作品。本来はインスタレーションとして、ループでの上映が想定されている。モノクロ/サイレント。インスタレーション版は作家のサイト(http://www.tanja-deman.com)を参照のこと。

Video Feedback
この日最後のプログラムとして、午後10:30からは「Video Feedback (Live Performance)」と題された河合政之氏のビデオ・パフォーマンスが、巨大な三面スクリーンが設置されたホールにて行われた。アナログのモニターとビデオカメラのフィードバックを基本マテリアルとして、PCを一切使用せずに、ビデオエフェクターやビデオミキサーを駆使しながらノイズ的な電子的映像を生成するというパフォーマンスである。ビデオフィードバックの再帰的な特性のなかで、ランダムなエラーが際限なく増大し、グラフィカルな視覚性と構成を持って立ち現れる。このような説明からは所謂VJパフォーマンスに似たものを想像するかもしれないが、コンセプトとしてはそれと真逆であり、テクノロジーの制御からはみ出したエラーそのものと戯れる、批評性を持ったビデオ・パフォーマンスだったといえる。

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