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マルセイユ二日目も、規則正しく8時に朝食。フェスティバルの上映プログラムはだいたい14時からなので、マルセイユ滞在中は、午前中にとにかく街を歩いていろいろ見て回りたいと考える。朝食後、シレイラ氏に道を教えてもらってから出発。まず、旧港に向かって歩き出し、サン・シャルル駅の構内を抜けて大階段に出る。駅は高台にあるので街が一望できる。やっぱり、あまり大きな街だとは思えない。建物の色が似通っているのは使用している石が同じだからだと、昨日ケイトさんに教えてもらった。
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実は初めてのフランスどころか初めてのヨーロッパなので、街並のひとつひとつが新鮮でおもしろいと感じた。路地裏を30分ほど歩いて旧港に到着。付近のレストランを含めて観光客ばかり。旧港を右に回って、まずはサン・ジャン要塞に立ち寄って、ごく一般的な観光を楽しむ。網の目のような奇抜な外観の建物は、「マルセイユ=プロヴァンス2013」に合わせて今年オープンしたばかりの欧州地中海文明博物館(MuCEM)。空中にせり出した奇妙な外観の建物は、これも今年オープンしたばかりのヴィラ・メディテラネ(Villa Méditerranée)。この埠頭周辺には他にも、今年改修されたばかりだという視点美術館(Musée Regards de Provence)や、「マルセイユ=プロヴァンス2013」のメイン会場であるらしい、巨大倉庫を改装したJ1といった文化施設が集中しており、マルセイユ市が「マルセイユ=プロヴァンス2013」を通して、芸術・文化の振興に力を入れていることがよく現れている。
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さて、この日の目的は、隈研吾の設計によって4月に開館したばかりの、FRACことPACA地域圏現代美術基金センター(Fonds Régional d’Art Contemporain Provence-Alpes-Côte d’Azur/FRAC PACA)を見物しに行くこと。FRACは複雑に配置されたガラスパネルの外観が目を引く8階建ての建築で、裏手に隣接する年季の入ったアパートとの対比がユニークだった。
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この時はジョイスから引用された「Ulysses at the Face」というタイトルにて、フロアごとに異なる作家の展示を行っていた。そのなかでも特に目立っていたのが、地下一階と二階で展示を行っていたHans Op de Beeckの『Sea of Tranquillity』だった。以下はその抜粋。

彼らは映画を美術として上映展示しており、それは超大型客船の航海についての短編劇映画だった。とはいえ、明確なストーリがあるわけでもない。老齢の船長が指揮する超大型客船のなかでは、優雅なパーティーや、整形手術、マッサージ、ダンスショー、葬儀など、様々な文化の営みが行われている。この様子を台詞無しで、静かに観察するようにして映し出してゆく。表現としては(意図的にCGっぽさを残したような)コンピュータグラフィックスを多用しており、そのフラットで無菌室のような空間は、この作品のなかに漂う神話的な虚構性を際立たせる。最後は自宅にて夫(船長)の帰りを待つ家人のシークエンスによって、映画は閉じられる。また、薄暗い展示空間内には、博物館のように超大型客船の模型、航海を描いたドローイング、衣装、小道具などが並べられており、展示空間全体で虚構性をさらに増強していた。

これは、作品としてはマシュー・バーニーと同じく、映画を映画館というフォーマットから、美術館というフォーマットに移植するタイプの見せ方である。ここで、この作家を擁するギャラリーは、美術館やコレクター向けの美術品として映画を再設定している。そのコマーシャリズムや戦略にはあまり関心がないのだが、むしろこのような再設定によって、映画館における映画とは何であったのか、あるいは美術館における実験映画・ビデオアートとは何であったのかという、様々な文脈の混乱が引き起こされていることの方が興味深いと思えた。

二階では、模型のセットを次々に組み替えて、架空の風景を次々に作り出してゆく、過去の映像作品『Staging Silence』が上映展示されていた。これは全編がネットで公開されていたので、そちらを見てもらえばいいだろう。

他のフロアでは別の作家達によって制作されたインスタレーションなどが展示されていた。

つづく。

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