11/8 – 3

午後6:00からは「Terr(h)istories of Belgian video arts : Vidéographies」と題された、ベルギーのビデオアートの上映となる。ベルギーではVideographieという番組が1976年から1986年まで放送されていたらしく、パイクやローリー・アンダーソンの作品などが取り上げられたらしい。そして、2003年にそれを受け継いで「Vidéogr@phie(s)」がスタートしたという。このプログラムは、その「Vidéogr@phie(s)」による2010年コンペティションのセレクトと、パイクおよびローリー・アンダーソンの代表的作品の上映という内容だった。パイクは『Global Groove』、ローリー・アンダーソンは『O superman』というよく知られた作品の上映だったので、ここでのレヴューは割愛して、コンペティションのセレクトから印象に残った作品について言及する。


・Julien Brunet – The swimming pool (Belgium 2004, 2’48)
ヴィオラとトニー・ヒルのコンセプトを組み合わせたような印象の作品。静かな空間のなかで水面の虚像が揺らめきながら、非現実的な空間を作り出す。カラー/サウンド。

Hee Won Navi Lee - Phone Tapping
・Hee Won Navi Lee – Phone Tapping (Korea/France 2009, 10’20)
ソウルの夜景と、それに重ねられる電話ノイズ混じりの音声。カメラはゆっくりと周回しながら夜景を映し続ける。最後にコンピュータグラフィックスによって、夜景のなかの無数の灯火はパーティクルとなって、闇の中に霧散してゆく。カラー/サウンド。

午後6:00からは「Quebec : history of video art」と題された、ケベックのビデオアート特集。近年のビデオアーティスト10名くらいの作品と、それぞれのプレゼンテーションという内容だったので、ここでは割愛。

その後、会場は夕食会となり、マイケル・ゴールドバーグ氏といろいろな話をしながら食事をとった。ここでは親しみを込めてマイケルさんと書かせてもらおう。マイケルさんに初めてお会いしてから、もう5年くらいになると思うが、今まで詳しい身の上の話や、仕事の話は聞いたことはなかった。近頃では、仕事としてヨーロッパのテレビ局から依頼されて、東北の震災被災地や、福島の避難指示区域などで取材活動を行っているそうだ。腰にはGPS記録機能付きのガイガーカウンターをぶら下げておられた。というわけで、会話はビデオアートのことよりも、むしろ原発事故に関わるご意見などをお聞きする流れになった…。

午後9:00頃からは「Terr(h)istories of video arts : Quebec 1」と題された、ケベックの近年のビデオアート特集だったが、これも印象的な作品があまりなかったので割愛。

このあたりになってくると集中力も切れてくるのだが、もう一踏ん張りということで、午後10:30頃から遅れて始まった「Master of time : Robert Cahen」と題された、ロベール・カエン特集に臨む。カエンはフランスの作曲家・ビデオアーティストであり、DVDボックス「Robert Cahen Film + Videos 1973-2007」もリリースされている。彼はシェフェールに師事していたことから、楽曲やサウンドトラックを自分で手がけることもある。この日のプログラムは、1980年代までの比較的初期の作品で固められていた。

Robert Cahen - Trompe l’oeil
・Robert Cahen – Trompe l’oeil (1979, 6’05)
フェリーニの映画に着想を得たという作品。暗闇から浮かび上がる水面、列車の描かれた幻灯、霧のなかの人影、チェス盤、幻想的なバレエなど、「騙し絵」と題される通り、奇妙な夢の中を漂うように非現実的なイメージが合成されてゆく。器楽曲の断片をつなぎ合わせたサウンドトラックもカエンによるもの。カラー/サウンド。

Robert Cahen - L’entr’aperçu
・Robert Cahen – L’entr’apercu (1980, 9’15)
線路を走る列車や、遊園地の光景、映画のファウンドフッテージ(?)などの映像素材に、格子模様のようなビデオエフェクトをかけて、色調を大きく加工する。現実を変形して、超現実的な世界を垣間見ようとした作品とでもいえばいいのだろうか。抽象的な楽曲もカエンによるもの。カラー/サウンド。

・Robert Cahen – Nuage noir (1982, 2’30)
遊園地のアトラクションの映像素材に『L’entr’aperçu』と同様のビデオエフェクトをかけて、イメージを加工する手法の作品。音楽には、シュトラウスのクラシック曲がそのまま使われている。カラー/サウンド。

Robert Cahen - Juste le temps
・Robert Cahen – Juste le temps (1983, 12’40)
列車の窓の外を流れてゆくランドスケープを撮影し、これにビデオエフェクトをかけたうえで、旅行客の様子を撮影したショットを織り交ぜながら構成する。ここで“旅行”、もしくは“移動”という行為は抽象的なイメージに還元され、ひとつの固まりとして観客に提示される。フィールドレコーディングと器楽曲が繊細に重ね合わされたサウンドトラックのコンセプトは、ミシェル・シオンによるもの。本作は特にサウンドトラックが秀逸だと思う。カラー/サウンド。

・Robert Cahen – La danse de l’épervier (1984, 13’50)
スローモーションでダンスを撮影し、これにビデオエフェクトをかけて構成した作品。エフェクトは若干控えめ。静謐な楽曲はミシェル・シオンによるもの。カラー/サウンド。

・Robert Cahen – Montenvers and mer de glace (1987, 8’50)
アルプスを観光する人々の様子を捉えた、ジャック・タチの映画のようなコミカルな旅行記。サウンドトラックはカエンによるもの。カラー/サウンド。

朝から映像に浸りすぎて、この日はとにかく疲れた。ふらふらになりながら零時前にレジデンスに戻リ、すぐに休む。

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