EXPERIMENTS IN CINEMA v9.72 DVD

v9.72 2006年に開始されたらしいメキシコの実験映画フェスティバル「Experiments in Cinema」は、2006年の第4.2回よりDVDrにて、上映作品のリリースを行っている。お世辞にも上品とはいえない、パンキッシュなDIY精神溢れる手焼きパッケージながら、収録される作品が豊富なので結構重宝している。という訳で、2014年の第9.72回の7枚組DVDrも、例年のように押さえてみた。以下のサイトから購入できます(個人の方なら45$です)。 http://experimentsincinema.com/eicmerchandise/eic-v9.72-dvd-set
7枚というボリュームなので、全てをレヴューするのは勘弁だけど、面白かった、あるいは少し引っかかった作品は以下のとおり。


・Bright Mirror by Paul Clipson, USA, 9 minutes (16mm), 2013
ポール・クリプソンは、さまざまな光景の断片を、心象風景的に繋ぎ合わせる表現で知られるフィルムメーカーである。やはり多重露光の操作や構成が巧みであり、緊張感のあるサウンドも含めて完成度は高い。


45 7 Broadway by Tomonari Nishikawa
・45 7 Broadway by Tomonari Nishikawa, USA, 5 minutes (16mm), 2013
西川智也は、アメリカ実験映画の良質な部分を日本国内に紹介する、キュレーターとしての活動でも知られる、アメリカ在住のフィルムメーカー。本作は、街頭を行き交う人々を撮影したモノクロのフィルム素材を、自家現像によって複数の原色でプリントし、それらをオプチカル処理で合成した作品である。重ねられる各素材は、同じポジションから同一の風景を撮影したものだが、微妙にズレやブレを含んでいる。それによって、原色のレイヤーは一致することなく、振動する多層性をもって前景化される。このように説明するとパラシネマ的なコンセプチュアル作品かと思うだろうが、本作のポイントはそれだけではない。この作品が撮影されたマンハッタンのあるエリアでは911以降、カメラ用の三脚を立てられなかったという。この手持ちカメラの揺れの背景には、ある種の社会性が含まれていることに注目したい。


3 Frames by James Snazell
・3 Frames by James Snazell, UK, 12.5 minutes, 2013
フィルムの僅かな断片を、ループさせながら横方向に運動させる。そしてこのフッテージに漸次的な色調変化を見せる処理を施して、観客の知覚を撹乱するような運動を生み出す。色調変化やレイヤー化の処理については、アナログとデジタルを横断する環境で行っているように見えるが、このような中間的スタンスは興味深い。


・Solaristics by Peter Rose, USA, 10.75 minutes, 2013
「遠くを見れない男」等で知られるフィルムメーカー、ピーター・ローズのビデオ作品。太陽が黒点に被われるという天体現象を撮影した作品であり、ポスプロ作業は行っていないということだが、実のところこれは、カメラ内のイメージセンサーにおける黒沈み現象である。イメージセンサーの特性を逆手に取った、ちょっとしたアイデア作品。


・Chick Strand Document by Caroline Koebel, USA, 2 minutes, 2013
チック・ストランドの遺した詩的なバイオグラフィーを素材として構成した作品。分解されたテクストはフリッカーのなかで網膜に焼き付けられる。先日の東近美における「映画をめぐる美術」で展示されたマルセル・ブロータースのフィルムにも通じる、テクストとしての映画。


Left Side, Riverside by Caryn Cline
・Left Side, Riverside by Caryn Cline, USA, 8 minutes, 2011
マンハッタンのリバーサイドの風景を撮影したシンプルな日記映画的作品ではあるが、サウンドの使用法が効果的で、多層化された穏やかな光景に引き込まれる。外部サイトには埋め込めなかったが、以下のリンクで全編を観ることができる。 http://vimeo.com/carynyc/riverside


・Bruce’s Borders by Scott Fitzpatrick, Canada, 7.5 minutes (16mm), 2013
1882年に刊行された印刷会社のカタログから、ビクトリア様式の装飾パターンを引用して構成されたフィルム。痙攣するような速度でパターンが運動する。恐らくサウンドトラックにもパターンが焼き付けられているものと思われ、接触不良的なノイズが断続的に聴こえる(このような光学トラックの原理を利用したコンセプトは昔からよくあるが、運動するパターンのイメージを含めて完成度が高い)。


・Sunhouse Elevation/Sunhouse by Azimuth Eleanor Suess, UK, 10 minutes (silent), 2013
テラスのある屋内に差し込む太陽光の変化を2つのスクリーンで、光源の高さと方向に分けて分析する作品。さまざまな視点から一日の光の推移を追いかけることで、光源と空間が織りなす光の運動を明らかにする。


・On The Road by Jack Kerouac by Jorge Lorenzo, Mexico/Colombia, 14 minutes, 2013
ジャック・ケルアックの「路上」のテクストを、タイプライターによって35mmフィルムロールに移し替えた作品。これもまたテクストによる映画であるが、フィルムという視覚的メディアの構造を再発明するかたちで、テクストに対する解体的な介入を行っている。 On The Road by Jack Kerouac by Jorge Lorenzo

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