Guy Sherwin – Short Film Series 1975-2014

eyeGuy Sherwin – Short Film Series 1975-2014(16mm, Silent, 98min)

まず撮影時の環境や、映画用16mmカメラの光学系や内部機構を、一つの集合的なメディウムとして捉えてみよう。そのような前提に立った時、このDVDに収録されたガイ・シャーウィンの作品は、ちょっとした工夫によってキャプチャーされた、撮影場所の環境(および運動)の記録として立ち表れる。これら34本の短編作品は、すべて100フィート(時間に直すならば3分足らず)の長さであり、各作品ごとに、ささやかな工夫を組み込んでいる。いずれも事後的なオプチカル処理(合成や再撮影)に頼ることはしていない。例をいくつか挙げてみよう。

・「Metronome」:コマ撮りによって、窓から差し込む陽光の動きをアニメーションとして描く。しかし陽光の運動とは別に、机上に置かれたメトロノームが一定の時間を刻んでおり、映像の中に二つの別種の運動が仕込まれていることが分かる。
・「Tree Reflection」:画面の上下を区切る形で、「実物の木」と、水面に映し出された「虚像の木」を対比させる。そして、途中からカメラの位置を上下逆転させたり、多重露光や逆転撮影も併用しながら、虚構と実像を多層化させてゆく。
・「Hand/Shutter」:鏡に向き合った撮影者と16mmカメラ。撮影者は手で自分の両目を覆い、次にカメラのレンズを覆うという動作を繰り返す。それにより、「観客(=カメラ)が見ているものを撮影者が見ていない、あるいは撮影者が見ているものを観客(=カメラ)が見ていない」という状況がつくり出される。
・「Tap」:水の入った皿が床に置かれている。この対象を撮影するカメラのフォーカスは、往復的に操作され、皿のなかの水面に映し出された風景にピントが合ったり、床と皿そのものにピントが合ったりする。

このような作品群がタイトルの表記すらなく、断片的に提示される。こうやって文章で説明されただけではコンセプチュアルで無味乾燥な作品を想像するかもしれないが、フィルムに定着されたイメージは、モノクロならではの柔らかさを持った、詩情豊かなイメージとなっていることも強調しておきたい。

これらの作品を観るという行為は、スクリーン上のイメージを結節点として、観客と世界の関係を再構築するものと言えるだろう。映画とはある意味、撮影場所の環境と、そこで繰り広げられる運動を変形させる行為であると言えるが、このようなオプチカル処理に頼らないダイレクトな制作プロセスは、その異化効果を極限まで際立たせる。それは観客の意識の中において、空間と時間についての認識を変化させるものである。

DVDパッケージには、作品タイトルが記された34枚のカードが封入されている。
guy

Advertisements

本日の散財

・Jorge Honik – Experimental Films 1968-1975 / BD
・Ben Gwilliam – Oxide / DVD
・近藤譲 – 線の音楽 / CD
・Jim O’Rourke – Steamroom 13 / File
・Muslimgauze – Deceiver 3 & 4 / 2CD
・Muslimgauze – Un-used Re-mix’s 1994-1995 / CD
・Muslimgauze – Dar Es Salaam / CD
・Muslimgauze – Souk Bou Saada / CD
・Vatican Shadow – Fireball / File
・Vatican Shadow – April silencer / File
・Vatican Shadow – Easing of Our Task / File
・Vatican Shadow – Oklahoma Military Academy / File
・Vatican Shadow – Elohim City / File
・Vatican Shadow – Enduring Mysteries / File

七月前半の散財。実験映画関係のディスクの他は、全て音楽。近藤譲は特典冊子読みたさに渋谷タワレコにてわざわざ購入。形式や目的から解放されたものとしての音楽。冊子の対談を読み込んで、その音楽の特性を大まかに理解することができた。ジム・オルークのデジタルアルバムのシリーズも順調にリリースが続いている。その他はムスリムとバチカンばかり。バチカンは先月入手した新作カセット6本組のデータ版で、移動中に聴くためにダウンロード購入。内容は良い意味で言うまでもない。トータルで152分もあるので、当分これだけでしのげる。私はうっかりiTunesStoreで購入したが、多分Boomkatの方が安くダウンロード購入できます。

vatican6cs

「MAMプロジェクト 021:メルヴィン・モティ」キュレータートーク

イベント情報:キュレータートーク
http://www.mori.art.museum/contents/mamproject/project021/event.html

映像研究者の阪本裕文氏を迎え、メルヴィン・モティの過去のフィルム作品をテーマに、本展担当キュレーターとの対談をおこないます。
日時: 2014年7月 7日(月) 19:00-20:30
出演:阪本裕文(稚内北星学園大学情報メディア学科准教授)、近藤健一(森美術館キュレーター)
会場:森美術館展示室内
定員:80名(要予約)
料金:無料(要予約・展覧会チケット)
お申し込み: こちら

森美術館MAMプロジェクトのトークイベントに出席します。近藤健一氏の解説によってメルヴィン・モティの映像作品を観ながら、現代美術家による映像の文脈と実験映画の文脈という、近くて遠い二つの文脈間の距離を飛び越えるような話をさせて頂ければと思っています。当日は、ヴェネツィア・ビエンナーレに出品された、「アイゲングラウ(宇宙における内なる自己)」(2011)と、「アイゲンリヒト(宇宙における内なる自己)」(2012)などを上映する予定とのことです。

追記:下記のリンクより、PDF版パンフレットがダウンロードできます。よろしくお願いします。
・MAMP021_MelvinMoti.pdf

追記2:実験映像についての共通言語を持つことが出来る学芸員・キュレーターの方は(写真美術館組を除くと)意外と少なかったりするのですが、イベント後、歩きながらの雑談のなかでお聞きした「美術の映像と実験映像という、意味のない分断があるのでは」という近藤氏のスタンスは、とても共感できる心強いものでした。実験映像の文脈を踏まえながらメルヴィンの映像作品を観ることで、多面的な彼の活動のなかにある映画的側面について、違う角度から光を当てることが出来たのであれば幸いです。以下に、阪本がトークで使用したキーノートのPDFを(若干補足して)上げておきます。
・森美術館トーク 阪本キーノート

2014年7月1日

・集団的自衛権行使容認 閣議決定(NHK 7月1日 17時23分)
「政府は臨時閣議を開き、歴代政権がこれまで行使できないとしてきた集団的自衛権について、従来の憲法解釈を変更し、行使を容認することを閣議決定しました。」

引用元: 集団的自衛権行使容認 閣議決定 NHKニュース.

坂道を転げ落ちるようにして、たった半年で秘密保護法成立から憲法解釈変更までやってきた。この状況を招いたのは、抽象的な空気に流されるなかで彼らに権力を与えた、震災・原発事故以降のわれわれの社会、われわれ国民に他ならない。もう歴史の分岐点は越えてしまったように思う。数十年後に歴史を学ぶ学生がいたとして、年表を読みながら「ああ、ここが変わり目か」とつぶやくのは、恐らく今日この日だろう。