マイケル・スノウ 音楽作品レヴューまとめ

マイケル・スノウのコンサートに向けて、勢いだけで書いたレヴューをまとめた。CCMCはあと1枚持ってるはずだけど、これで打ち止め。改めて強調しておきたいのは、スノウの音楽的側面を「ジャズミュージシャン」のひと言で括ることは、到底出来ないということ。むしろ、フリージャズ、サウンド・インスタレーション、ミニマルなテープ音楽、疑似民族音楽などの多面体として捉えられることによって、その音楽的形式や慣習の異同が前景化してくるのだといえる。「ジャズミュージシャン」という言葉に囚われている人は、とにかく『The Last LP 』と『Musics For Piano, Whistling, Microphone And Tape』だけは聴いてほしい。そのうえで、コンサートに赴こう。

・Michael Snow ‎– The Last LP CD: Unique Last Recordings Of The Music Of Ancient Cultures
・Michael Snow ‎– Hearing Aid
・Michael Snow ‎– 2 Radio Solos
・Michael Snow ‎– Sinoms
・Michael Snow ‎– 3 Phases
・Jack Vorvis and Michael Snow ‎– Black And White
・CCMC + Christian Marclay ‎– CCMC + Christian Marclay
・Larry Dubin and CCMC – The Great Toronto Drummers Greatest Recordings
・CCMC – Volume 4 – Free Soap
・Michael Snow – Musics For Piano, Whistling, Microphone And Tape

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スノウの実験映画については、いまさらレヴューしなくても良いだろう。『WVLNT』については「表象」でも少しだけ触れているので、そちらを。

Michael Snow ‎– The Last LP CD: Unique Last Recordings Of The Music Of Ancient Cultures

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(Art Metropole, CD)

SI NOPPO DA from THE LAST LP by Michael Snow from Phil Solomon on Vimeo.

マイケル・スノウと言えば、やはりこの作品(私が持っているのは、レコードから針起しされたというCD版)。世界各地で収集された、古代文化の記録音源集である(ということになっている)。ブックレットには、詳細に各録音についての解説が書かれている。特に、アフリカで現地録音された(ということになっている)『Si Noppo Da』は資料的な意味にとどまらず、実にサイケデリックで素晴らしい。

最後のページに謎の逆向け乱丁があるが、気にしないこと…。
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Michael Snow ‎– Hearing Aid

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(Supposé, CD)

日本でマイケル・スノウといえば、まず何よりも『波長』であり『中央地帯』であり、最近はようやくフリージャズ/フリーインプロの演奏者としての側面も知られてきたといえるが、サウンドアートの仕事も興味深い。これはそんなスノウの、メトロノームと4台のカセットプレーヤーによるサウンド・インスタレーション作品『Hearing Aid』(1976)のCDであり、2001年にベルリンにて同作が展示された際に出版された(詳しくは、バルセロナ現代美術館のウェブサイトを参照のこと)。ここには、インタビューになってないインタビューや、展示会場でのディスカッションが収録されている。本作に触れれば、スノウの音楽的側面が「ジャズミュージシャン」という狭い枠に収まらないものであることは、即座に理解できるだろう。

Michael Snow ‎– 2 Radio Solos

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(Freedom In A Vacuum, CD)

年季の入った短波ラジオのレシーバーを使用して、即興で録音された1980年の作品。編集は一切行われていないらしく、行為自体にコンセプトが求められているのだろう。オリジナルは、カナダの由緒正しいノイズレーベル Freedom In A Vacuum からカセットでリリースされていた(私が持っているのは再発版)。ノイズレーベルとスノウの間にどんな関係があったのか、あまり興味が湧かないが、ここに収められている雑音は全く素晴らしいものである。

Michael Snow ‎– Sinoms

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(Art Metropole, CD)

フリージャズ/フリーインプロにおけるマイケル・スノウの仕事は、皮肉なことに「映画作家の音楽」とは言いづらい、普通に良質な音楽になってしまう傾向がある。その反面、ピアニストとしての作品ではない、スノウのサウンドアート寄りの仕事は大変興味深い。こういう作品こそが、非音楽家の音楽に要求されるものだろう。本作は、ケベック市の歴代市長34名の名前を読み上げる、22個の音声を素材としたコラージュ作品。聴覚的な感触としては、まるで音声詩である。

Michael Snow ‎– 3 Phases

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(Avatar / OHM éditions, 3CD)

マイケル・スノウの仕事は、「映画作家の描いた絵、ミュージシャンの作った彫刻、画家の映画、映像作家の音楽、彫刻家の絵、映画作家の彫刻」などと形容される。それは言い換えると、スノウの仕事においては、使用されるメディウムの慣習や形式といったものが逸脱的に使用される傾向があるということだ。しかし、CCMCに代表されるフリージャズ/フリーインプロのピアニストとしてのスノウは、割と典型の範囲内でピアノを演奏していたりするので、悪くはないのだが「純粋に音楽的な楽しみにおいてピアノを弾いているんだろう…」というふうに受け止めていた。マイケル・スノウと恩田晃とアラン・リクトという組み合わせにいまいち関心を持てず、当時作品を購入しなかった私が、今回のコンサートを聴きに行く理由。それは、自分の理解を確認するためなのかもしれない。

この三枚組の作品集のなかにも、やはりピアニストとしてのスノウが存在している。しかし、ここにはフリーインプロだけではなく、彼のルーツであろうブルースのカヴァーから、自身によって作曲された楽曲まで、さまざまな作品が三つのテーマに分けて録音されている。そのサウンドの中には、ピアノをめぐる慣習や形式といったものが多面的に浮かび上がっており、なかなか興味深い。

Jack Vorvis and Michael Snow ‎– Black And White

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(Track & Light Recordings, CD)

CCMCにも飽きてきたので、マイケル・スノウが個人名義で参加している作品を聴いて予習。これは不定形なフリーインプロではなく、実にフリージャズらしい印象の、ドラムとピアノのデュオ作品。鋭利で熱い演奏が堪能できる。やれば出来るんだなあ、と思う。