第7回恵比寿映像祭「あたらしい過去:ダンカン・キャンベル」

2014年のターナー賞を受賞した映像作家、北アイルランド出身の作家であるダンカン・キャンベルの特集。北アイルランド問題をはじめとして、様々な政治的テーマを分析する映像作品を手がけているようだ。スタンスとしては、ハルン・ファロッキのラインにいる作家だと理解すればいいだろう。

Bernadette
・ダンカン・キャンベル – バーナデット Duncan Campbell – Bernadette
Video, 38min, 2008
1969年に21歳で下院議員に当選した、北アイルランド公民権運動の活動家であるバーナデットの記録映像をもとに、新たに撮影した映像を加えながら、過去を現在から語り直そうとする作品。政治的な季節の記録映像を経て、作品の終盤でバーナデットは、「私」として社会化される以前の、極めてパーソナルな自分について語り始める。カラー。サウンド。

itforothers
ダンカン・キャンベル:他のものたちに Duncan Campbell – It for Others
HD-Video, 54min, 2013
ターナー賞を受賞した作品であり、物についてのマルクス主義的な映画である。まず、レネ+マルケルの『彫像もまた死す』(1953)のアフリカ彫刻のフッテージを引用しながら、ヨーロッパの植民地主義による、アフリカ文化の強制的な融合についての思考が語られる「二つの文化が平等に出会えていたなら…」、「アフリカの村落の、芸術・文化の可能性は失われた…」などの言葉と共に、博物館側の「文化的継承のため」という不平等な主張もインサートされる。次に、交換と流通の構造が、五人のパフォーマーのダンス・パフォーマンスによって絵解き的に説明される。そして、日記の日付によって区切られながら、様々なイメージとマルクス主義的な言葉によって、交換価値についての思索が深められてゆく。アイルランド共和軍(IRA)の兵士の写真から、その写真がプリントされたグッズを製造する中国の繊維工場へと映像は流れて行き、やがて思索は「この作品の価格」に向けられてゆく。最後にはカードゲームに興じる男たちの手の映像に重ねて、「作品の価値は市場や観客によって決まる——社会の価値体系において、価格とはそれを反映する変数である」という旨の、作品の交換価値を作品が規定するというメタ的な結論に至る。カラー。サウンド。

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