第7回恵比寿映像祭「フィンランド・ヴィデオアートの現在形:AV-arkkiより」

フィンランドの非営利配給組織、AV-arkkiの作品集。日本ではフィンランドの映像の情報などは殆ど知られていないので、その表現の豊かさを知る良い機会になった。一応、使用メディアがビデオなのでビデオアートとして括られているが、実験映画的な方法論も目立つプログラムだった。以下、印象深かった作品についてのみ述べる。多くの作品がAV-arkkiのウェブサイトにて公開されているので、参照のこと。
http://www.av-arkki.fi/

・ピンク・ツインズ – デフェンストレイター Pink Twins – Defenestrator
Video, 8min30sec, 2008
コンサートホールなどの空間を撮影した静止画像を電子的なエフェクトで崩して抽象化する作品。良くも悪くもグラフィカルな面白さに留まる。カラー。サウンドはmegoのようなデジタルノイズ。

・アデル・アビディン – 戦争の消費 Adel Abidin – Consumption of War
Video, 3min20sec, 2011
スーツ姿の二人のビジネスマンが、おもむろに天井の蛍光灯を取り外し、スターウォーズごっこに興じる。チャンバラの最中に蛍光灯は次々に割れてゆき、部屋が真っ暗になって終わり。テーマが若干安直かもしれない。カラー。サウンド。

・ピルヴィ・タカラ – イージー・ライダー Pilvi Takala – Easy Rider
Video, 4min25sec, 2004
バスの中で、仕込みの役者が「プレゼンに行くが事情があって準備ができていない。困っている。ジャケットを貸してくれ」と、見知らぬ男性に頼み込む。男性は躊躇しながらも、役者の頼みを受け入れる。最初は不審がっていた周りの乗客も含め、その場の人々は打ち解けてゆく。喜劇的なドキュメント。カラー。サウンド。

・ピルヴィ・タカラ – 現実の白雪姫 Pilvi Takala – Real Snow White
Video, 9min15sec, 2009
パリのディズニーランドの入り口に、白雪姫に扮した作家が現れる。周囲の人々は、本物の白雪姫と思い込みサインを求めたり記念写真を撮影したりするが、やがて警備員がやってきて、そのままの格好では入園させられないとして議論になる。現実に持ち込まれた喜劇的な状況。カラー。サウンド。

・ヤニ・ルスキカ – 場面転換 6つの時間の中で Jani Ruscica – Scene Shifts, In Six Movement
Video, 15min58sec, 2011
このプログラムの中で、最も興味深かった作品。通常の映像における「声・文字・イメージ(写真やイラスト)」と「場所・時間」の関係性を組み替えて、そこに6つのバリエーションを見せる。カラー。サウンド。
1:パリの街路を移動撮影によって映し出し、そこにパリの街の良さを紹介する声がアフレコで重ねられる。移動撮影はわざとレールを写し込み、作為性が強調されている。
2:紀行先で撮影されたスナップ写真が画面に映し出される。それを虫めがねで拡大しながら、声の主は思い出を語る。この発話行為が行われている場所はどこかの屋外であると思われ、その場所の雑踏の音も聴こえる。しかし、フレームには紀行写真しか映し出されない。
3:エジプトの歴史上の人物を描いた2種類のイラスト(イラストが描かれた時代の価値観によって、キャラクターの表象が変化している)。このイラストに、キャラクターを演じる女性の声があてられる。
4:屋敷を描いた絵葉書が画面に映し出され、文章が読み上げられる。
5:ローマの街を対象にして、(1)と同じ方法をとったバリエーション。
6:チェンバロにて「中国風」と題された楽曲が演奏される。カメラはゆっくりと移動してゆき、チェンバロ本体に描かれた「中国風」の装飾画を映し出す。ここで先のパートにおいて使用されていた「声」は、楽譜の演奏に置き換えられる。

・マリヤ・ヴィータフッタ – 死の庭 Marja Vitahuhta – Garden of death
Video, 19min57sec, 2013
葬儀場と墓地で働く人々の営為を、台詞のないドキュメンタリー的なフィクションとして描き出す。ただし、年相応の従業員を演じる人々のなかで、主役だけは死から最も遠い存在としての子役に置き換えられている。仰りレンズを生かした撮影手法と、繊細でプロフェッショナルなカラーコレクションによって、世俗的なものが皆無の静謐な場所が表現されている。カラー。サウンドは音のみフィールド音のみ。

・サラ・ティッカ – 動物園 Salla Tykka – Zoo
Video, 12min, 2006
ヒッチコックの映画に出てきそうな風貌のカメラを持った女性が、ありふれた動物園のなかで動物達を撮影する。ただそれだけなのだが、サスペンス映画風の演出の模倣と、謎の水球競技を撮影した断片的なインサートショットによって、観客を長編のサスペンス映画を見ているような気にさせる作品。カラー。サウンド。

・サラ・ティッカ – 巨人 Salla Tykka – Giant
Video, 12min47sec, 2014
ダイレクトシネマ的な手法で撮影された、ルーマニアの体操選手養成学校の様子。そこにボイスオーバーで、生徒へのインタビューの声を重ねる。選手を生産する機械的なシステムとしての養成学校の一面が強調されているように思えるが、上記の作品における定型的演出の模倣というコンセプトを踏まえるならば、これも演出によるプロパガンダ的な印象操作を意図しているのかもしれない。カラー。サウンド。

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