White Hospital @ 新代田Fever

whfever

TASTE PRESENTS Live Aktion4 “FIRECRACKER”
4月18日 新代田Fever
・★As/SS/gZ★ (ASTRO+Co/SS/gZ+★GrinderS★)
・WHITE HOSPITAL

日本のノイズミュージックの展開を顧みた時、サブカルチャー化したハーシュやローファイ、スカムといった表現に結びつかない、どこか異質な存在として浮かび上がるユニットが二つある。一つは小長谷淳によるGrimであり、もう一つが桑原智禎によるVasiliskである。特にGrimは、インダストリアルやリチュアルといった文脈を押さえた稀有な存在であったが、90年代以降活動を休止していたため、国内のシーンにおいては、ヨーロッパのヘヴィーエレクトロニクスのような、ある種の社会性を含意した表現へと向かう分岐が、ほとんど展開されないままとなった。この二つのユニットが再び活動を活発化させるのが、2010年頃からである。いずれも若い世代の音楽家(GrimにはLinekraftの大久保正彦など、VasiliskにはUngezieferの西村圭介)のサポートを得ながら、それぞれのユニットの現在形を追求し、時としてHowling ov Himalaya(HovH)として共演するなどして、両者の関係は継続していたようである(私は未見だが山之内純太郎も、近年GrimやHovHのライブに参加する機会があったようだ)。

さて、GrimとVasilisk、この二つのユニットが、元々はWhite Hospitalと名乗る一つのグループであったことはよく知られている。White Hospitalはアルバム『Holocaust』(1984)と、シングル『We Wish You Are Merry X’mas』を残しているが、それは2014年になって、ようやくオーストリアのSteinklang Industriesから再発された。そこで聴くことのできる擬似宗教的な祭儀性と、激しいインダストリアルなノイズの併置は極めて特異なものであり、彼らが当時のシーンから隔絶した存在であったことが想像できる。そのWhite Hospitalが、意外なことにCopass Grinderzの出演するイベントにて一夜限りのライブを行うと知り、観に行ってきた。これは、Copass Grinderzの名越由貴夫が、80年代にVasiliskやGrimの作品に関わっていた縁だろう。(ちなみにこの日のCopass Grinderzのライブは、Astroこと長谷川洋のシンセサイザーによるノイズと合体したAs/SS/gZとしての演奏であり、それも素晴らしいものだった。)

White Hospitalのメンバー構成は、小長谷がヴォイス、桑原がドラム、そしてサポートとして大久保がベースおよびドラム缶などのメタルパーカッション、西村がエレクトロニクス(Roland MC307)というものであった。宗教曲のようなイントロのなかメンバーが登場し、それぞれの楽器を手にしてインダストリアルなリズムの反復を開始させる。大久保は楽曲によってベースとメタルパーカッションを持ち替えていたが、その雷鳴のようなメタルパーカッションの打撃音はGrimを思わせる。しかし、よく聴けばメタルパーカッションだけでなく、Vasilisk的なシンセのループや桑原のリズミックなドラムが、反復の基盤となっていることが分かる。それはGrimやVasilisk、あるいはHovHとも微妙に異なる、両者の最良の部分の集合だった。小長谷のヴォイスは、彼特有の異国の言葉のようなものであり、それは時としてパワーエレクトロニクスのような激しい怒声となる。2曲目あたりで小長谷はステージからフロアに降り、その後の殆どの演奏時間を観衆の中で叫び続けることになるが、その様子はステージとフロアのあいだの垣根を取り払った、架空の民族の祭りのようでもあり、Grimの『Beautiful Morning』が演奏された時には、観衆が小長谷を囲んで身体を揺らせていたのが印象的だった。リチュアルな空気感を伴った重々しいリズムの反復による、まるで祭儀にでも参加しているかのような没入的な意識状態への誘導。そして、アウトロでも宗教曲のようなトラックが流され、ライブは終了した。

思えば腐敗した工業社会のイメージや、前近代的な祭儀性といった要素は、個人を包摂する全ての社会的規範に対立し、それを解体する手がかりとして、かつてのノイズ/インダストリアルの音楽家によって発見されたものであったと言えるが、このような文脈は、2011年以降の社会が異物を許容しない同質化・体制化に向かっている今だからこそ、再び有効性を持ち得ているように思う。White Hospitalの二人は、この文脈を保持した存在である。素晴らしいライブであり、あらゆる抑圧に苛立っている人にこそ聴かれるべき音楽であった。

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