「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」@ 森美術館

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作家名/作品名:アンソニー・マッコール『円錐を描く線 2.0』
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森美術館で開催されている、「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」のなかに、イギリスの実験映画作家、アンソニー・マッコールの『円錐を描く線 2.0』が出品されているので、それを目当てに観に行ってきた。

スモークの焚かれた空間のなかで、白い光点が30分程度の時間をかけ、ゆっくりと円を描いてゆく。そして最終的に、上映空間に映写機とスクリーンを結ぶ円錐が形成されるという作品である。観客には自由に動き回って、この円錐を体験することが許されている。本作は1973年に発表された作品の2010年版であり、1973年版が16mmフィルムで制作されていたのに対して、ビデオで制作されている。(ちなみに1973年版は、マスク合成で光点の軌跡を左右反転させることによって円を作っていたので、円はビデオによる2010年版の方が正確に出ている。ただし、2010年版はビデオプロジェクションのために、黒の部分がフィルム上映に比べて若干明るい。)

本作は、映画史的にはエクスパンデッド・シネマ(拡張映画)の文脈にあり、映画というメディウムを通常とは異なる方法によって再発明するタイプの作品であると位置付けられる。ここで映画は、役者の演技によって物語を映し出す手段としてではなく、一定の持続のなかで光の軌跡を形成するメディウムとして捉え直されているのだ。よって、本来であれば通常の映画上映の空間において、フィルムによって体験するのが最良な作品であるといえる。しかし、マッコールはその後、美術館向けに同様の手法によるインスタレーションを制作しているので、その仕事の中からは、映画の再発明という文脈は薄れてしまっている。おそらく2010年版を見た観客も、本作を異形の映画であるとは思わないだろう。作家は、今や二次元と三次元の関係構造において、シンプルな形態を経験してもらうことを望んでいるのかもしれない。しかし、それでもなお、映画の技術を捉え直す契機が、ここには内包されている。

本作については、『表象08 特集:ポストメディウム映像のゆくえ』でも書いたので、そちらも参照のこと。

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