「1,2,3,4 Fuck Off! count,30」Kazumoto Endo, Cracksteel, Grim @ 鶯谷What’s Up

img_97791

先日、『Maha』をリリースしたばかりのGrimのライブが行われるというので、鶯谷のライブハウスWhat’s Upに行ってきた。会場は小さなバーといった感じなのだが、天井に椅子を引っ掛けてスペースをつくり、フロアにドラムセットやアンプ、PAなどが設置されていた。密集した観客は至近距離でバンドやユニットを見ることになる。今回のイベントはアメリカのバンドであるPenis Geyserのツアーに併せたものらしく、ハーシュノイズ勢とグラインドコア勢が入り混じったラインナップとなっていた。私はこの日、Kazumoto Endo、Cracksteel、Final Exit、Sete Star Sept、Grimの演奏を聴いた。Final Exit、Sete Star Septのライブも楽しんだが、ここでは特にKazumoto Endo、Cracksteelと、Grimのライブについてレヴューしたい。

Kazumoto Endo:
Kazumoto Endoは卓上に機材を並べ、至近距離で観客に取り囲まれてハーシュノイズの演奏を行った。薄い鉄板にコンタクトマイクを付けて、これを発音源としながらエフェクターを通して出力するというのが基本的な方法のようだ。おそらくミキサー以外のエフェクター類は、DIYな外観から自作回路によるものだと思われる。そのサウンドは、細かい操作によってサウンドを複雑に変化させてゆくというもので、職人的な巧みさによって展開されていった。

Cracksteel:
同じくCracksteelも、卓上に機材を並べ、観客に囲まれながら演奏を行う。Cracksteelの発音源は小型のサンプラー(?)と思われる機材で、これを右手でランダムに叩きながら、左手で複数のエフェクターを操作していた。こちらは断続的な溜めと解放を行き来しながら暴発し続けるような、ストレートなハーシュノイズを展開させていた。いずれのユニットも、極めて痛快な演奏だった。

Grim:
Grimは、国内では例外的な、ハーシュノイズとはまた異なる分岐をたどったインダストリアル・ミュージックとしての文脈を抱えたユニットである。その表現は、音楽を通した擬似宗教的な超越性に向かいながらも、インダストリアル・ミュージックとしての形態に立脚している。その存在は、この日のラインナップのなかでも一際異彩を放っていた。Grimは先日オーストリアのSteinklang Industriesからリズミックな要素を強調した新作『Maha』をリリースしたばかりであるが、この変化がどのようにライブに影響を及ぼすのか、それがこの日の私の最大の関心事だった。

私はこの『Beautiful Morning』から続く『Maha』でのリズミックな要素の強調を、大変面白いと思いながら聴いた。それはAfrican Head ChargeやMuslimgauzeを連想させるものだと思っていた。しかし、このリズミックな要素が、この日のライブの中に持ち込まれていたのかというと、その要素の強調は然程ではなかった。むしろプリミティヴでノイジーな反復による演奏が中心的に展開されていたといえる。このことを踏まえて整理するならば、おそらく録音物としてのGrimとは、Grim=小長谷淳の音楽的全体像の提示であり、ライブにおけるGrimはその一側面のプレゼンテーションであると位置付けるのが適切なのだろう。そう考えると、私は見逃したが、民俗楽器の鐘を鳴らす小長谷と山之内が会場を徘徊したという昨年夏のGrimのライブのあり方も納得できる。想像になるが、もしかしたらアシッドフォーク的な側面にクローズアップしたGrimのライブというのも、そのうちあり得るのかもしれない。

さて、この日のライブの編成は、小長谷に加えて、ギターに前川大輔、ドラムに大和田悠介、メタルパーカッション+ベースとして大久保正彦という通常のメンバーだった。先述の狭い空間にドラム缶までもが持ち込まれており、会場の密集度は凄い事になっていた。演奏の展開を簡単に説明しておく。まず、冒頭からしばらくはベースとギターノイズによるドローンが続く。それが一転して、この日のイベントのコンセプトに合わせたのかのように、小長谷の絶叫とブラストビートに転じる(このGrim版グラインドコアといえる演奏は少し意外だった)。そして、このドローンとブラストビートの往復が数度繰り返されたのち、中盤からはドラム缶が打ち鳴らされ、Grimらしいノイジーな反復演奏によるトランスミュージックが展開される。小長谷は観客の中でもみくちゃになりながら絶叫し、彼らを煽る。時間にして20分程の短い演奏だったが、切れ目のない流れの中で、音楽を通した擬似宗教的な場が形成されていた。

Advertisements