高田漣+Jim O’Rourke「ACOUSTIC ENSEMBLE」@ヤマハ銀座スタジオ

Acoustic Ensemble
高田漣+ジム・オルーク「ACOUSTIC ENSEMBLE」 ヤマハ銀座スタジオ 11月1日

幸運なことに、『Bad Timing』(1997)の再現演奏を10月26日の再現コンサートで聴いたばかりだというのに、わずか一週間で再度『Bad Timing』の再現を聴く機会に恵まれた。今回のイベントは、『Simple Songs』(2015)に収録された「These Hands」にペダルスティールギターで参加し、先日の草月での『Bad Timing』の演奏にも参加した高田漣がホスト役を務めるトーク+ライブイベント「ACOUSTIC ENSEMBLE」として開催されたものであり、アコースティックギターマガジン主催のギター演奏者向けのイベントの一部でもある。会場はヤマハ銀座スタジオであり、普通のコンサートとはまた違った、良い意味でのアマチュア演奏者の熱気が感じられた。

前半の高田とオルークの対談は、ゆったりした流れのなかで和やかに進行していった。勿論それはそれで面白かったのだが、基本的には事前にアコースティックギターマガジンに掲載されていた内容と重なる部分も多い。なので、雑誌に掲載されていた対談について一つ指摘しておきたい。雑誌における高田とオルークの対談のなかで私が何よりも興味深かったのは、オルークによるジョン・フェイヒーへの言及である。それによると、オルークはフェイヒーの音楽に、当初はあまり興味を持てなかったようだ。その後、即興音楽の理解を深めてから、改めてフェイヒーを聴いたところ、60年代のミニマル・コンポーザーの作品のように聴こえたらしい。これはとても面白い発言である。オルークとデレク・ベイリー(=即興音楽)、オルークとクリストフ・ヒーマン(=ノイズ)、オルークとトニー・コンラッド(=ミニマルミュージック)の関係は大体理解しているつもりだが、オルークとジョン・フェイヒー(=カントリーブルース)についての話は、私が忘れているだけかもしれないが、あまり読んだ記憶がなかった。なので、あまり短絡的に断言するのは控えるが、どうやら対談を読む限りにおいてオルークは、カントリーブルース等のアメリカのルーツ音楽そのものに関心を示していたというよりも、フェイヒーの弛緩したような演奏のなかに、コンラッドやフィル・ニブロックのような系統のミニマルミュージックに通じる循環性を見出していたのだろうと思える。であれば『Bad Timing』と『Happy Days』(1997)、そしてGastr Del Solの「Dry bones in the valley (i saw the light come shining ’round and ’round) 」(1996)の試みも、すべて合点が行く。そして後半の高田とオルークのライブのなかで、この合点が早合点でなかったことは、音楽的にも裏付けられることになる。

高田とオルークのライブは、まず高田の楽曲を演奏してからオルークを呼び込み、『Bad Timing』の後半2曲と、ニール・ヤングのカヴァーを演奏、アンコールで『Simple Songs』から高田が参加した「These Hands」を演奏するという内容で、40分程度のライブながら大変内容の濃いものとなっていた(ちなみにニール・ヤングのカヴァーは、元々はパット・メセニーのカヴァーをやる予定だったが、いろいろな困難があって断念したそうだ)。このブログでは『Bad Timing』のB面、すなわち「Bad Timing」〜「Happy Trails」の演奏について詳しく述べたい。

草月コンサートで披露された『Bad Timing』の再現演奏は、どちらかというとドラムパート入りの大所帯による、ロック寄りのアレンジがなされていたが、この日の演奏はそれとはまた違っていた。この日の演奏では、高田が「Bad Timing」の始めでアコースティックギターを、そして途中からペダルスティールを演奏し、オルークはチューニングを変えたアコースティックギターを持ち替えながら、ギターシンセを駆使して演奏する。全体の印象として草月再現バージョンよりも、高田+オルークバージョンは格段に繊細であり、アルバムの印象に近い。カントリーブルースの形式を借りたミニマルミュージックという、アルバム制作時にオルークの意図したであろうコンセプトは、かなり理想的な形で再現されていたと思う。まず、「Bad Timing」は、ビブラフォンや弦楽器のパートが、二人で演奏するために細かくアレンジされていた。フィンガーピッキングによるギターのミニマルな反復は、エフェクターのループを活用しながらオルークが一人で重ねてゆく。このオルークの演奏を、高田のペダルスティールが支える。改めて思ったがペダルスティールはオルークの音楽と、かなり相性が良い。「Happy Trails」は、冒頭のギターノイズをアコースティックギター+ギターシンセで表現し、突然入ってくる管楽器のパートは、オルークが気合の入ったピッキングでこなす。フェイヒーの弛緩したような循環性とミニマルミュージックの関係を見事に表現した、素晴らしい演奏だった。草月再現バージョンも良かったが、個人的にはGastr Del Solを想起させる繊細な高田+オルークバージョンの方を高く評価したい。この二人でいつか『Happy Days』や、Gastr Del Solの楽曲の再現演奏もやって欲しいと思うが、それは流石にリスナーの欲張りすぎというものだろう。

この一週間で、ジム・オルークのあらゆる音楽的側面を聴くことができて、本当に満足している。これは私にとってのハッピーデイズだったと言うべきだろう。

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