上映会予告「第20回アートフィルム・フェスティバル 松本俊夫著作集成第一巻 1953-1965 刊行記念 “松本俊夫:新発見&再発見”」

愛知県美術館で開催される「第20回アートフィルム・フェスティバル」において、「松本俊夫著作集成第一巻 1953-1965 刊行記念 “松本俊夫:新発見&再発見”」と題されたプログラムが上映される。このプログラムは映像担当の学芸員氏の理解によって、誰もがよく知るメジャーな松本俊夫作品ではなく、新発見作品、上映機会のほとんどなかった忘れられた作品、珍しいプリントや新しいプリントで固められた恐ろしい内容となっている。しかも、これだけの内容なのに入場無料。中部圏の方々にはぜひ足を運んでほしい。以下、フェスティバルの概要と、各作品の解説を述べておきたい。

第20回アートフィルム・フェスティバル
日時:11月29日~12月6日
会場:愛知県美術館 12階アートスペースA
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上映スケジュールPDF

実験映画やビデオ・アート、ドキュメンタリー、アニメーション、自主制作映画など、既存のジャンル区分を越えた視点から作品を選出し、映像表現の先端的な動向を紹介する特集上映会です。1990年代より特異な風景映画を制作するイギリスの監督パトリック・キーラーの「ロビンソン三部作」を初紹介する他、コレクション企画「線の美学」展関連作品上映、年末に著作集の刊行が始まることで新たな注目を集めつつある松本俊夫の新発見作品を含む特集、愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品として平成26年度に制作した、パフォーマー川口隆夫の創作プロセスを追った山城知佳子の新作の初公開等を予定しています。

松本俊夫著作集成第一巻 1953-1965 刊行記念「松本俊夫:新発見&再発見」
日時:12月4日 16:30〜『修羅』 19:00〜短編作品集

今冬、新たに著作集が刊行されるのに合わせ、新発見された企業 PR 映画『晴海埠頭倉庫』(1965 年)や、1970 年の「日本万国博覧会」(大阪万博)せんい館で行われた『スペース・プロジェクション・アコ』(1970 年)の記録映像、8mm フィルムで制作された『ディレイエクスポージャー』(1984 年)等の貴重な作品を紹介。また『修羅』(1971 年)や『アートマン』、『青女』(ともに 1975 年)等の代表作をフィルム上映します。


修羅2
・松本俊夫『修羅』(35mm, 134min, 1971)
鶴屋南北の「盟三五大切」を原作とする前衛的な時代劇。不合理な情念の絡み合いが、避けがたい悲惨な結末を呼び込む。撮影は鈴木達夫、出演は中村賀津雄、三条泰子、唐十郎など。本来は冒頭のみカラーで、以降はモノクロとなる作品であるが、今回の上映では、カラーのパートが冒頭以外にもう一つ存在する貴重な35mmプリントを使用する。

・松本俊夫『晴海埠頭倉庫』(16mm, 33min, 1965)※Blu-ray上映
近年発見された日本通運株式会社の企画によるPR映画であり、この年に完成した晴海埠頭倉庫の業務を解説する。斬新なフレーミングや、綿密なカメラワークを展開しており、企業のPR映画でありながら実験性に満ちた作品となっている。音楽は湯浅譲二による器楽曲+テープ音楽。

スペースプロジェクションアコ
・松本俊夫『スペース・プロジェクション・アコ』記録映像 (16mm, 15min, 1970)
『アコ』は「日本万国博覧会せんい館」における大規模なマルチ・プロジェクション作品であり、10台の35mm映写機と8台のスライド投影機によって構成されている。この記録映像はその館内の模様を最初から最後まで、固定ショットで、ノーカット収録したものである。音楽は湯浅譲二によるテープ音楽の傑作である「スペース・プロジェクションのための音楽」。この記録映像は、埼玉県立美術館での「日本の70年代 1968-1982」展や、文化庁メディア芸術祭、「記録映画アーカイブプロジェクト」などにも貸し出されてきたが、16mmプリントでの一般上映は今回が初めてである。

アートマン
・松本俊夫『アートマン』(16mm, 11min, 1975)
河原に佇む般若の面を被った人形の周囲をカメラが激しく旋回し、観る者の意識に強烈な眩暈を与える国内実験映画の傑作。人形の周囲をグリッドで仕切って、様々なパラメータのショットを撮影し、それを一コマづつ再構成することによって制作された。音楽は一柳慧による電子音楽。撮影には写真家の山崎博も同行した。今回上映する2012年製作の16mmプリントは、ラッシュをテレシネして監督立会いの元でカラーコレクションを行い、それを参照しながらタイミングをやり直した完全版と言えるものであり、赤外線フィルムを使用した独特の色味が、監督の意図に忠実に再現されている。

青女
・松本俊夫『青女』(16mm, 30min, 1975)
一切の説明を排して一人の女性が森林と海辺をさまよい歩く。全編赤外線フィルムを使用しているため、幻覚的な印象を観る者に与える。音楽は一柳慧による電子音楽。正しい読み方は「せいじょ」。 監督は本作をあまり高く評価していないが、抒情的な雰囲気は松本作品においては、かなり珍しいものであり忘れがたい。今回上映する2012年製作の16mmプリントは、監督立会いの元でチェックを行ったものである。

ディレイエクスポージャー
・松本俊夫『ディレイエクスポージャー』(8mm, 3min, 1984)※ビデオ上映
九州芸術工科大学に勤めていた時期に制作された、習作的な8mm作品である。カメラの自動露出機構を利用して、露出オーバーから適正露出に至るまでの数秒間の遅れをコンセプトとしている。

EEコントロール
・松本俊夫『EEコントロール』(8mm, 3min, 1985)※ビデオ上映
本作も九州芸術工科大学に勤めていた時期に制作された、習作的な8mm作品である。EEコントロールとは、シャッター速度優先自動露出機構のこと。コンセプトは『ディレイエクスポージャー』と同じだが、短いショットの構成が、より緻密になっている。

バイブレーション
・松本俊夫『バイブレーション』(8mm, 3min, 1985)※ビデオ上映
本作は京都芸術短期大学に移った時期に制作された、習作的な8mm作品である。固定カメラによってコマ撮りされた、ズームの非連続的な変化を積み増さねることをコンセプトとしている。本作の表現は、そのまま『エングラム=記憶痕跡』の中でも使用されている。

殺人カタログ
・松本俊夫『殺人カタログ』(Video, 20min, 1975)
近年発見されたビデオ作品であり、オープンリールテープのマスターからデジタル化を行った。松本の初期のビデオ作品でありながら、幻覚的なエフェクトの追求ではなく、ビデオアート的な長回しにおける循環性を、『薔薇の葬列』や『修羅』に通じるブラックなイメージに結びつけた、珍しい作品となっている。撮影は写真家の遠藤正。

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