2015

今年は趣向を変えて、レコードやDVDではなく、2015年に観たライブやコンサート、展覧会、上映会から、印象に残ったものを10+2点選んだ。順不同。


1:White Hospital
新代田Fever 4月18日

・日本のノイズ/インダストリアルの歴史において途絶えてしまった系譜を確認するうえで、欠かすことのできないリユニオン・ライブだった。

2:サントリー芸術財団 サマーフェスティバル2015「レクイエム~詩と声と命の果つるところ」
サントリーホール 8月23日

・B. A. ツィンマーマン『ある若き詩人のためのレクイエム』の日本初演。音楽史的な意味にとどまらず、このような作品を、現在の社会状況に重ね合わせて聴くことが主催側によって意図されていたとすれば凄い。

3:Jim O’Rourke「two sides to every story」
草月ホール 10月25日〜26日

・各プログラムを対比して、その関係性を読み解くべきコンサートだったことは言うまでもないが、特に2日目のプログラム「Jazz Trio and Big Band」が重要。

4:わが愛憎の画家たち―針生一郎と戦後美術
宮城県美術館 1月31日〜3月22日

・そろそろ針生一郎の仕事を、花田清輝の設定した文脈を出発点にしながら、過剰に「政治的に」読み直す仕事が必要。

5:石田尚志 渦まく光 Billowing Light
横浜美術館 3月28日~5月31日

・現在の日本において、現代美術と実験映画を繋ぐことができる唯一の作家による初回顧展。美術と映像を架橋するためには、続いて美術側が映像(映画)を語り、映画(映像)側が美術を語るという交換が必要。

6:イメージフォーラム・フェスティバル2015 横浜特別講座1「光によって延長してしまった遠近法」(ナビゲーター:石田尚志)
横浜美術館 5月30日

・反映画的な視点によって編まれた、歪な遠近法を生み出す装置である「映画」についての批評的プログラム。「映画とは何か」という設問は、観念としてのジャンルや身振りのレベルだけではなく、ここに接続する必要がある。

7:イメージフォーラムフェスティバル2015 ポール・シャリッツ2「タッチングとストリームス」、ポール・シャリッツ3「ナッシングと癲癇発作対比」
新宿パークタワーホール 4月28日〜5月6日

・ポール・シャリッツの大規模な国内回顧上映。ボワ+クラウスを参照するまでもなく、シャリッツは映像のメディウム論を再考する上で重要な作家である。

8:+上映会「Lynn Loo + Guy Sherwin」
音楽実験室新世界 9月1日

・イギリス実験映画を代表する作家であるガイ・シャーウィン夫妻による、ライブパフォーマンスとしての上映。ライブハウスという理想的なPA環境で彼らのエクスパンデッド・シネマを上映できたことは、今年最大の喜びだった。

9:Ken Jacobs「死に至る星条旗」オールナイト上映
シアターイメージフォーラム 10月30日

・ケン・ジェイコブスの7時間にも及ぶ超大作のオールナイト上映。映画と政治、映画と実験、映画と自由についての思考が集約された、根源的な意味でラジカルな映画だった。

10:Ken Jacobs「Nervous Magic Lantern」
スパイラルホール 11月3日

・ケン・ジェイコブス+恩田晃による、ライブパフォーマンスとしての上映。ただし、ここで上映されたものは映画ではなく、映画未満の「パラシネマ」である。ジェイコブスの作品も、映像のメディウム論を再考する上で迂回することはできまい。少なくともゴダールの3D映画と同じくらいには重要である。

次点1:Re: play 1972/2015―「映像表現 ’72」展、再演
東京国立近代美術館 10月6日〜12月13日

・評価できる点と、批判すべき点が混在した展覧会なので、次点に含めた。少なくとも重要な展覧会ではある。

次点2:第20回アートフィルム・フェスティバル「松本俊夫著作集成第一巻 1953-1965 刊行記念 “松本俊夫:新発見&再発見”」
愛知県美術館 12月4日

・私はこの上映を観に行っていないが、PJMIAとして上映素材を提供したこともあり、次点として含めた。既存の松本俊夫のフィルモグラフィーについての理解を書き変える、極めて珍しい作品によるプログラムになったと思う。

出版予告「記録映画 復刻版 全6巻・別冊1」

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「記録映画 復刻版 全6巻・別冊1」
不二出版書籍紹介「『記録映画』【復刻版】全6巻・別冊1」
カタログ(推薦文:川本博康、マーク・ノーネス、松本俊夫 PDF)

『記録映画』は記録映画作家協会(1960年まで「教育映画作家協会」)が1958年6月から1964年3月までに全65冊を刊行した雑誌である。 創刊号「発刊のことば」には、『記録映画』は「記録映画、教育映画作家なかまの共通の広場」「作家と教育映画界との交流の場」「作家と観客との結びつきの場」「文化の各パートの専門家や外国の記録映画界との交わりの場」とある。これらの言葉のように、映画監督はじめ映画関係者、作家、芸術家、観客が多数寄稿し、座談会、対談も充実している。 ドキュメンタリー映画のみならず、教育映画・劇映画・テレビドキュメンタリー・文学・美術・音楽・写真など、様々な領域の諸動向の線は、その全てが何らかの形で雑誌『記録映画』という点を通過していたことが分るだろう。

〔主要執筆者〕朝倉摂、厚木たか、阿部進、粟津潔、飯村隆彦、池田龍雄、石堂淑朗、岩崎昶、岩淵正嘉、江藤文夫、大島渚、小笠原基生、小川徹、加納竜一、久里洋二、黒木和雄、定村忠士、佐藤忠男、清水邦夫、渋沢龍彦、白坂依志夫、関根弘、滝口修造、武井昭夫、竹内健、竹内実、谷川俊太郎、谷川義雄、玉井五一、寺山修司、東松照明、徳永瑞夫、野田真吉、野間宏、花田清輝、羽仁進、羽田澄子、針生一郎、東陽一、藤原智子、松尾一郎、松川八洲雄、松本俊夫、山際永三(高倉光夫) 、山田和夫、湯浅譲二、吉田喜重、和田勉

◎解 説=佐藤洋、阪本裕文
◎推 薦=川本博康、マーク・ノーネス、松本俊夫
◆体 裁=B5判・上製・総2,694頁
◆揃定価=本体150,000円+税
◆別 冊=解説・総目次・索引 ※別冊のみ分売可 本体2,000円+税 ISBN978-4-8350-7826-7

・第1回配本(第1巻~第3巻・別冊1)本体75,000円+税 ISBN978-4-8350-7817-5 2015年12月刊行
・第2回配本(第4巻~第6巻)本体75,000円+税 ISBN978-4-8350-7822-9 2016年5月刊行

不二出版より、図書館や大学研究室向けに、記録映画作家協会の機関誌である「記録映画」の復刻版が出版される。同誌は戦後日本のドキュメンタリー映画史を研究する上での基本資料でありながら、全号を所蔵している図書館が存在せず、そのために歴史研究において、ある種の空白領域を生み出されてきたことは否めない。それは戦後日本のドキュメンタリー映画についての言説が、小川紳介や土本典昭の活動を中心軸とする形で組み上げられてきたことからも窺える。しかし、それらのアプローチがどのような歴史的文脈のなかで生じたのかを考え直すならば、機関誌「記録映画」を避けて通ることはできない。今回の復刻によって空白領域はようやく埋められる。このような記録映画の展開は、実験映画を始めとする1960年代の映画の変革とも一体化したものであった。

蛇足ながら付け加えておくと、今回の復刻に際しては読者にお願いしたいことがある。それは、共に解説を書いた佐藤洋氏とも共通の見解なのだが、記録映画の運動内部における立場や意見の違いを単純化して捉えてほしくないということである。どれが正しく、どれが誤りであるといった単一の観点では、この時期の映画運動の多層性や、作家個人個人の思考は見通せない。この「記録映画 復刻版」を手にする今日の読者に求められているものは、「記録映画」に記された言葉とその実践としての作品をつぶさに再検証しながら、ここに生じた立場や意見の違いを否定的なものとしてではなく、集団的な運動の豊饒さにおいて捉える姿勢だろうと思う。このことに留意のうえ、カタログをダウンロードして、川本博康氏、マーク・ノーネス氏、松本俊夫氏の推薦文を重層的に読み込んでみてほしい。

World Goes Pop @ Tate Modern

The World Goes Pop
Tate Modern
Sep 17, 2015 – Jan 24, 2016

World Goes Pop
Whaaam! Pop! Kapow! This is pop art, but not as you know it. Tate Modern is ready to tell a global story of pop art, breaking new ground along the way, and revealing a different side to the artistic and cultural phenomenon. From Latin America to Asia, and from Europe to the Middle East, this explosive exhibition connects the dots between art produced around the world during the 1960s and 1970s, showing how different cultures and countries responded to the movement. Politics, the body, domestic revolution, consumption, public protest, and folk – all will be explored and laid bare in eye-popping Technicolor and across many media, from canvas to car bonnets and pinball machines. The exhibition will reveal how pop was never just a celebration of western consumer culture, but was often a subversive international language of protest – a language that is more relevant today than ever.

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テートにて、非アメリカ・ヨーロッパ圏のポップアートの動向を歴史化する展覧会、『World Goes Pop』が開催されている。日本からは、篠原有司男、田名網敬一、松本俊夫などの作品が取り上げられている。スタンダートなポップアートではない周縁的なポップアートの発生は、第二次世界大戦後の高度化した資本主義の浸透とパラレルに広がったと言え、その発生にはそれぞれの国に個別の条件が絡んでいるが、作品の表層においては共通している。その不気味なまでの共通性こそがポップカルチャーの怖い部分とも言える。

展覧会に合わせて、幾つかの関連イベントも組まれているのだが、日本の実験映画/エクスパンデッド・シネマ/ビデアートを取り上げた4つの上映プログラムが組まれている。いずれも興味深い内容である。戦後映像芸術アーカイブからも上映用プリントを数点貸し出す予定です。
Eyes Go Pop: Psychedelic Japan(宮井陸郎、出光真子)
In the Shadow of Pop(安土ガリバー、宮井陸郎、島村達雄)
Human Flicker: The Cinema of Jun’ichi Okuyama(奥山順一)
Mona Lisa Looking Back(粟津潔、松本俊夫、中谷芙二子)