「松本先生追悼 京都時代の映像展」@京都Lumen Gallery


同じくこの週末(12月15日~17日)、京都ルーメンギャラリーでは様々な方々の協力のもと、松本俊夫が京都造形芸術大学に在職していた時期の作品が特集上映されている。この追悼プログラム「松本先生追悼 京都時代の映像展」を京都でやることは、とても大きな意義のあるものだと思う。

「松本先生追悼 京都時代の映像展」
会期:2017年12月15日〜17日
料金:一般1,000円、学生500円
主催:Lumen gallery
お問合せ:info@lumen-gallery.com
協力:ダゲレオ出版、FMF、NPO法人戦後映像芸術アーカイブ
科研費番号「JSPS科研費15K02184」
http://www.lumen-gallery.com/

京都時代のフィルモグラフィーは以下で、今回上映されるのは◎でマークされた作品とのこと。
(タイトル|発表年|形式|時間)
◎EEコントロール, 1985, 8mm, 3min
◎スウェイ=揺らぎ, 1985, 16mm, 8min
◎バイブレーション, 1986, 8mm, 3min
・マルチコネクション, 1986, (ビデオインスタレーション), NA
・アーティキュレーション=分節, 1986, (ビデオインスタレーション), NA
・広がるコンピューターの世界, 1986, Video, 19min
◎エングラム=記憶痕跡, 1987, 16mm, 12min
・ドグラ・マグラ, 1988, 35mm, 109min
・ルミナス・グローブ, 1989, (ビデオインスタレーション), NA
・トラウマ, 1989, Video, 18min
・ウランド伝説, 1990, (演劇), 72min
◎Old/New=気配, 1990, Video, 20min
・ナラトロジーの罠, 1992, (ビデオインスタレーション), NA
◎ディシミュレーション=偽装, 1992, Video, 21min

さらに今回は、科研費課題(「日本映像芸術の1960〜1970年代:その歴史的全体像について」2015年~2017年)で作業を進めていた、未発表の試作である『1986夏』のデジタルアーカイブ化が完了したため、これも参考上映される。


『1986夏』(1986, 16mm, 3min *Silent)
この試作(『1986夏』は正式なタイトルではない)では『スウェイ=揺らぎ』『バイブレーション』から続く知覚の撹乱というコンセプトが、二つの手法によって複雑に展開される。その二つの手法とはコマ撮りと多重露光である。瑞々しい初夏の自然はコマ撮りによって細分化され、もう一つの多重露光されたズーム運動と重なり合う(撮影場所はいずれも京都造形大のキャンパスである)。
この試作から判断できることは、この時点(1986年夏)では、代表作である四本目の劇映画『ドグラ・マグラ』(1988)に至るまでの物語構造の実験が、表現のレベルで明確に開始されていないということである。あくまで本作は、同年のビデオ・インスタレーションである『マルチコネクション』『アーティキュレーション=分節』の姉妹作として位置付けるべきものなのだろう。そして、この夏の制作期間中に次作への構想が作家の中に生じはじめ、本作は試作のままサウンドも付けずに中断されたのだと空想してみるのは、とても面白いことである。それは知覚の撹乱というコンセプトを、物語に持ち込むことを意味する。この試作は『エングラム=記憶痕跡』を制作する直前の期間を埋める興味深い存在だといえるだろう。

デジタルアーカイブ化されたこの試作のデータは、科研費成果物として無償で提供できますので、ご興味のある方はお知らせください。いろんな人に幅広く観てもらい、研究などで活用してもらいたいと思っています。
また、この追悼プログラムのフライヤーはネットに出ていないようですが、そこに記されていた櫻井篤史氏・稲垣貴士氏のコメントに、松本先生への深い敬意を感じ取りました。京都ルーメンギャラリーの方々にリスペクトです。

松本俊夫『晴海埠頭倉庫』@物流博物館映画上映会「海と陸と」

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本日(12月17日)、品川の物流博物館では物流博物館映画上映会「海と陸と」が開催される。
http://www.lmuse.or.jp/event/eiga2017.html

この上映会は物流博物館が所蔵するPR映画がデジタル化されたことを受けてのもので、特筆すべきは松本俊夫『晴海埠頭倉庫』が含まれていることだろう。『晴海埠頭倉庫』は近年発見されたPR映画で、2016年のアップリンクでの松本俊夫特集でも上映した。その時の解説に少し手を加えて、下記転載しておきます。(全作品解説の記載されたアップリンクのサイトはこちら。)

松本俊夫『晴海埠頭倉庫』 Harumi Pier Warehouse, 1965, 16mm, 34min
近年発見された日本通運の企画、輸送経済新聞の製作によるPR映画であり、1965年に完成した晴海埠頭倉庫の業務を解説する。斬新なフレーミングや、綿密なカメラワークを展開しており、企業のPR映画でありながら実験性に満ちた作品となっている。音楽は湯浅譲二による器楽曲とテープ音楽。
製作:小平亨/脚本・監督:松本俊夫/撮影:高田昭/照明:鈴賀隆夫/音楽:湯浅譲二/編集:岩佐寿枝/解説:小松方正

本作は、『石の詩』での前衛的な表現をめぐってテレビ局とトラブルになり、映画を思うように作れなくなった、松本の創作活動にとっては苦しい時期に制作された作品である。作家への聞き取り調査では、本作はPR映画としての仕事であり、あまり満足した作品ではなかったように語っておられたが、そんなことはない。松本は撮影の高田昭とともに、クレーンに吊り下げられた貨物を真下から撮影したり、屋内の空間を最大限生かしてカメラを振り付けたりと、カメラワークの実験を可能な限り追求している。演出のコンセプトとしては、『300トン・トレーラー』を引き継ぐものであることは明確だろう。そして、湯浅譲二による器楽曲とテープ音楽は、そのような松本の実験を堅実に支えている。このような限界の中での創意工夫こそが、PR映画を作家性において見返すことの意義であることは言うまでもない。貴重な機会なので、是非。

Trap/HipHop MV 2017

今年は趣向を変えて、2017年にリリースされたトラップ/ピップホップで、よく聴いたもの、印象に残ったものを10点ピックアップ。ヒップホップに関しては、ここ2〜3年の典型的な文脈から逸脱したようなスタイルの流行に関心を持っていて、前にも増して聴くようになった。勿論、ノイズや現代音楽も相変わらず聴いているが、絶対量は減った。恐らく、自分の意識の中で、音楽の位置付けが少し変わったということもあるのだろう(それは消費するという感覚に近い)。以下の並びを見れば、自分の嗜好が、パンクの要素が若干入ったようなエモーショナルなトラップにあることは一目瞭然かと。

kiLLa – SHINE (Prod. No Flower)

YDIZZY – Dream Rain (Prod. KM)

YDIZZY – OMW (Prod. Chaki Zulu)

MONYPETZJNKMN – WHOUARE feat. Awich (Prod. Chaki Zulu)

MONYPETZJNKMN – UP IN SMOKE (Prod. Chaki Zulu)

kZm – Midnight Suicide feat. Awich (Prod. Mitch Mitchelson & Chaki Zulu)

kZm – Emotion (Prod. hnrk)

Gab3 – True Religion (Prod. Tripi Hendrix)

Gab3 – Hollywood Dreaming ft Lil Peep

Lil Peep & Lil Tracy – WitchBlades

簡単に概説しておくと、kiLLaは元々YENTOWNに属していた20歳前後の若いクルーで、昨年の秋にYENTOWNから集団で離脱した。ラッパーは現在のところ、YDIZZY、KEPHA、ARJUNA、BLAISEの4人。パンクスのようなファッションや、観客にモッシュを要求するパフォーマンスなど、トラップ以降に表れた典型的な文脈から逸脱する動きを、国内において体現しているクルーだといえる。面白いのは、メンバーのソロではエモーショナルな要素が前面に出てくるところで、例えばYDIZZYのソロやミックステープでそれは顕著だろう。
MONYPETZJNKMNは、YENTOWNに属するラッパー3人によるユニットで、MonyHorse、PETZ、JNKMNから成る。彼らは比較的固い韻を踏むのだが、リラックスしたフロウに、一歩引いて力を抜くというルーツレゲエ的な姿勢を感じさせる所があり面白い。ちょっと違うがフィッシュマンズや、シンガーがいた頃のDRY&HEAVYを思い出したりもする(過去に観たライブのイントロでは、Bob Marleyの『Concrete Jungle』を流していた)。YENTOWNは、この3人に加えてkZmや、今年から合流した沖縄出身の女性ラッパーAwich、そしてChaki Zuluをはじめとした複数のビートメイカーやDJを擁するクルーである。kZmは、kiLLaのメンバーだったがYENTOWNに残ったラッパーで、トラップのビートに乗せて、不穏で内省的なラップを聴かせる。海外でいえばBonesなどに近いといえ、既存のフォームからの距離感が絶妙だと思う。ちなみにYENTOWNとkiLLaは袂を分かったとはいえ、Chaki Zuluが双方をプロデュースしたり、kiLLaのリリースパーティーにPETZとkZmがゲスト参加したりと、完全に切れた訳ではないようだ。
Gab3(Uzi)は、西海岸のラッパーで、ここまで来るとエモーショナルなオルタナティヴロックといった趣だが、これをヒップホップにおける内部的な異化として捉えると、途端に、凄く批評的なラッパーなのではないかと思えてくる。ちなみにGab3は、MONYPETZJNKMNの『Zutto』のリミックスもやっているほか、2016年にはYENTOWNの面々とMVも作っている。
Gab3 – Know Me

そのGab3と一緒に曲もやっており、エモーショナルなトラップの代表格であった、GOTHBOICLIQUEに属するLil Peepは、つい先日、薬物摂取で亡くなったことが報じられた。