Trap/HipHop MV 2018

2018年にリリースされたMVでよく聴いた、あるいは印象に残った日本語のトラップ/ピップホップを10点ピックアップ(楽曲のみアップされたものも含んでますが)。全体としては、去年と変わらずエモさとハードコアさが同居したものが好みだった模様。

KID FRESINO – Retarded (Official Music Video)

KID FRESINO – Coincidence (Official Music Video)

KID FRESINO – Arcades ft.NENE (Official Music Video)

Febb as Young Mason – SLAY (Prod. Chaki Zulu)

ゆるふわギャング “Psychedeligood”

kZm – Dream Chaser feat. BIM (Prod. Chaki Zulu)

kZm – EMOTION (Chaki Zulu Remix)

Jin Dogg – 彼岸花 (cluster amaryllis) ft. Young Coco (Official Music Video)

YDIZZY – not (dead) (Prod. Chaki Zulu)

Jin Dogg & YDIZZY – set (Official Music Video)

Febb亡き後にリリースされたKid Fresinoの『ài qíng』は、ヒップホップ云々ではなく個人の痛みのようなものが普遍化された表現として印象的で、今年の秋から冬にかけて飽きもせず繰り返し聴いた(Fla$hBackSの諸作品と交互に)。音楽的にもユニークで、トラップとは違うやり方でヒップホップの典型からの逸脱を果たしており、ある音楽のスタイルが再編される過程で生じる面白さが、いたるところに表出していた。これもラッパーがトラックメーカーを兼ねているからこそ可能となったアプローチなのだろう。
ゆるふわギャングの空虚さや喪失感を内包したアンビエントな楽曲も、夏頃によく聴いた。ゆるふわにはKid Fresinoの現在の方向と一致するものがあり、この二者が接近するのは必然だったと思える。
今年のYENTOWNを引っ張ったのは間違いなくkZmの『Dimension』だった訳だが、この作品も、トラップ以降の何でもありになったヒップホップを象徴する作品としてよく聴いた。しかし、最も印象的だったのは、アルバムに収録された楽曲よりも、後日ひっそりとリリースされた「EMOTION (Chaki Zulu Remix)」だったりする。hnrkによる憂鬱なトラックが、Chaki Zuluによって、90年代のグランジのようなギターサンプルを中心に作り変えられており、初めて聴いた時にはそのギャップに衝撃を受けた。このような、トラップから一昔前のオルタナティヴロックへの跳躍が新しいものとして映るのはLil Peep以降の現象であるといえるが、それは逆説的にこの二つの音楽が根差しているものの共通性を示しているのかもしれない。トラップは、いまあるポピュラー音楽のなかでも、最も実存の問題を突き詰めた音楽だと思っているが、それは空虚さや喪失感を内包しながら、その空白を「いま・ここ」の享楽性に反転させることで成立しているのだろう。
一方、トラップをハードコアパンクのテンションにまで高めるJin Doggと、一時活動を休止していたYdizzyは両者ともに好調だったが、この両者が共演した「set」は、予想の斜め上をいくテックハウスのようなトラップで面白かった。短かったので続編を期待。

Advertisements

告知「イメージの廃墟 黒澤潤・実験映画作品集」

都内のインダストリアルスペースにて、長編実験映画『猫耳』(1994)の監督として知られる映像作家・黒澤潤の代表的な8本の作品を上映いたします。彼の事物(それはオブジェとしての身体も意味する)に対する独自のまなざしと実験精神が織り成すクールな世界観による作品群は、90年代に国内外の映画祭等で高い評価を獲得しながらも、その後、ソフト化された一部の作品を除き、長い間見ることが出来ませんでした。今回は当レーベルの調査によって新たに発見され、フルHDスキャニングによってデジタル化された、貴重なフィルム作品+αをお披露目いたします。本イベントは2部構成となっており、後半に上映する3作品ではミュージシャンである古舘徹夫氏、クリストフ・シャルル氏によるライブ上映を実施するほか、上映後には黒澤潤監督ご本人をお招きしての短いトークも行います。また当日、KRAUT FILM配給ソフト第一弾として、同氏のBlu-ray作品集を販売する予定です。最先端のデジタル化技術によって蘇った、伝説の実験映画作家のフィルム作品をぜひ、ご高覧下さい。

黒澤潤 / Kurosawa Jun
1964年生、多摩美術大学美術学部芸術学科卒。大学時代、同期と結成したインディーズ・バンドで数年に渡る活動をした後、萩原朔美に師事し、映画制作を始める。初期においては「光や物体(あるいはフィルムそのもの)をフレーム単位の編集によって操作する構造的なスタイル」の作品を多数制作、やがて作品は物語性を取り入れ始め、「肉体的エロス」や「タナトス」、そして「幼児性」といった要素を通じて、より自身の内面的世界の分析へと移行して行く。大学卒業後は福嶋輝彦・秋田敬明らによるアートプロデュースユニット<T.T.PARTY>との協働によって、現代美術の方面にも携わりつつ、1994年に恵比寿のイーストギャラリーで行った『猫耳』(1994)のプレミア上映では記録的な動員を達成。また、国内のノイズシーンとの関わりも深く、自身がノイズミュージシャンとして活動する傍ら、メルツバウを追ったドキュメンタリー『ビヨンド・ウルトラ・ヴァイオレンス』(イワン・ケルコフ、1998)ではコーディネイトを担当する。その他にも、パフォーマンスユニットとのコラボレーションや、映像オペラ『サテュリコン』(2004)を手掛けるなど、常に越境した映像表現を探求する。

桜台pool(東京都練馬区桜台1-7-7)
12月15日(土)
OPEN/18:00 START/18:30
入場料:2000円
主催:KRAUT FILM


まるでノイズレーベルのような匿名的な活動をみせるKRAUT FILMは、今年の夏、実験映画作家ピエール・リュック・ヴァイヤンクールを国内紹介する上映会を開催したが、その一方で、以前より黒澤潤のフィルムのデジタル化に取り組んでいたらしい。黒澤はノイズミュージックを始めとした1990年代のサブカルチャーとも通じる退廃的な表象の実験映画で知られるが、90年代半ばより作家が寡作となったために、その作品にアクセスすることが困難な期間が長く続いていた(このような過去の実験映画へのアクセスの困難さは黒澤作品に限ったことではないが)。
このような状況に一石を投じるべく、KRAUT FILMは、デジタル化が完了した黒澤作品を収録したBlu-ray作品集をリリースし、それに併せてライブ上映会を開催するらしい。上映会場は映画館ではなく、インダストリアル/ノイズのリスナーにはお馴染みの桜台poolであるが、いまの都内のスポットで、ここほど黒澤作品に適した場所もないだろう。プログラムは「Chapter 1:Selected works 1988 – 2003」と、古舘徹夫とクリストフ・シャルルがライブを行う「Chapter 2: 3 Experimental Short Films + Tetsuo Furudate & Christophe Charles Live Performance」によって構成される。古舘とシャルルは、90年代サブカルチャー的なノイズの要素を備えながらも、コンテンポラリーな電子音楽とも繋がる実験性を持った数少ない作家であり、ベストな人選だという他ない。
それにしても、ヴァイヤンクール、黒澤、古舘、シャルルを繋ぎ合わせるKRAUT FILMのオーナーの審美眼は、実にはっきりしている。それはインターネット普及以前のアンダーグラウンドな文化空間につながる回路を、このSNSが偏在化した現在においてこじ開けようとする、ある種の反時代的な身振りでもあるだろう。